改訂新版 世界大百科事典 の解説
ニトロプルシッドナトリウム
sodium nitroprusside
Nitroprussidnatrium[ドイツ]
化学式Na2[Fe(CN)5NO]・2H2O。正式名はペンタシアノニトロシル鉄(Ⅲ)酸ナトリウム。フェロシアン化カリウムと硝酸との反応によって得た液を炭酸ナトリウムで中和して得られる。ルビー色の斜方晶系結晶。比重1.71。16℃で水1lに400g溶ける。アルコールにも易溶。結晶としては安定であるが溶液中では不安定である。アルカリ性でアルカリ金属硫化物と反応して赤紫色錯体Na4[Fe(CN)5NOS]を生じる。この反応は硫黄イオンS2⁻の鋭敏な検出に使われる。硫化ナトリウムとして1γ(10⁻6g)に対応するS2⁻が検出できる。硫化水素イオンSH⁻および遊離の硫化水素ではこの呈色がない。また硫酸亜鉛あるいは硝酸亜鉛の共存で亜硫酸イオンSO32⁻と反応して赤色を呈する。チオ硫酸イオンS2O32⁻ではこの呈色がないため両者の判別に利用される。ただし直射日光下ではチオ硫酸イオンによって青色を呈する。また水銀(Ⅱ)とは難溶性沈殿を生ずるので,水銀(Ⅱ)の滴定指示薬に用いられる。
執筆者:宮本 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報