炭酸ナトリウム(読み)たんさんなとりうむ(英語表記)sodium carbonate

日本大百科全書(ニッポニカ) 「炭酸ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

炭酸ナトリウム
たんさんなとりうむ
sodium carbonate

炭酸のナトリウム塩。俗に炭酸ソーダまたは単にソーダといわれる。無水和物にはソーダ灰(無水炭酸ナトリウム)、十水和物には洗濯ソーダ結晶ソーダ)の名がある。自然界には一水和物(サーモナトライト)、十水和物(ナトロン)として存在する。炭酸ナトリウムを多く含んだ塩湖すなわちソーダ湖の周辺や湖底にはNa2CO3・NaHCO3・2H2Oの組成結晶となって堆積(たいせき)しておりトロナとよばれる。このような組成の天然ソーダはアメリカ、アフリカ、エジプト、中国などに多量に産出する。古代エジプトでガラスやせっけんなどの製造に用いられた世界最初のソーダである。炭酸ナトリウムは海藻を焼いた灰の中にも含まれ、昔はこれから抽出されていた。

[鳥居泰男]

製法

工業的にはアンモニアソーダ法ソルベー法)、ルブラン法、電解ソーダ法の三つの方法があるが、現在日本ではアンモニアソーダ法以外はほとんど行われていない。この方法では食塩の飽和溶液にアンモニアを吸収させたのち、二酸化炭素を通ずる。析出してきた炭酸水素ナトリウムを焼いて炭酸ナトリウムとする。ナトリウムの利用率を高めるため、日本ではこの方法の変形として塩安ソーダ法が開発されている。

 なお、近年天然ソーダの採掘が大規模に行われるようになり、アメリカなどでは生産量の80%以上がこの方法によっている。

[鳥居泰男]

性質

無水和物は白色吸湿性の粉末で、水によく溶けるがアルコールには溶けにくい。水溶液から結晶が析出する場合、32℃以下では十水和物、32~35℃では七水和物、35℃以上では一水和物となる。一水和物は白色潮解性の結晶。十水和物は風解性の結晶で、空気中で結晶水を失って一水和物となる。32℃で結晶水の中に溶ける。水溶液は加水分解して強いアルカリ性を示す。

  Na2CO3+H2ONaHCO3+NaOH
塩酸や硫酸などの強酸を加えると二酸化炭素を発生する。逆に、二酸化炭素を吸収させると炭酸水素ナトリウムが沈殿してくる。

[鳥居泰男]

用途

炭酸ナトリウムはアルカリとして、またナトリウム源として広く利用され化学工業上もっとも重要なものの一つである。ガラスの原料となるほか、せっけん、紙パルプ、食品、化学薬品の製造に用いられる。また、洗濯用洗剤、医薬品としての用途もある。

[鳥居泰男]



炭酸ナトリウム(データノート1)
たんさんなとりうむでーたのーと

炭酸ナトリウム一水和物
  Na2CO3・H2O
 式量  124.0
 融点  ―
 沸点  ―
 比重  1.55
 結晶系 斜方
 屈折率 (n) 1.506~1.509
 溶解度 48.9g/100g(水40℃)


炭酸ナトリウム(データノート2)
たんさんなとりうむでーたのーと

炭酸ナトリウム
  Na2CO3
 式量  106.0
 融点  851℃
 沸点  ―
 比重  2.533
 屈折率 (n) 1.535
 溶解度 7.1g/100g(水0℃)
 解離圧 19mmHg/1000℃

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「炭酸ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

炭酸ナトリウム
たんさんナトリウム
sodium carbonate

化学式 Na2CO3 。工業的にはソーダ灰,炭酸ソーダともいう。化学工業上最も重要な製品の1つで,1823年ルブラン法により工業的に初めて製造されたが,現在ではアンモニアソーダ法で多量に生産される。無色の粉末で,融点 851℃,比重 2.53。水溶液から 32℃以下で晶出させると 10水塩 (洗濯ソーダ,結晶ソーダともいう。無色斜方晶系結晶) ,32~35℃で7水塩 (斜方晶系) ,35℃以上では1水塩 (斜方晶系,柱状晶ないし板状晶) が析出する。水に易溶,水溶液は強アルカリ性を呈する。ほかの用途には,板ガラスおよびガラス製品類の製造,水ガラス,重曹,その他各種のナトリウム塩や炭酸マグネシウムなどの炭酸塩の製造,グルタミン酸ナトリウム,アミノ酸醤油の製造,中間体,染料,香料,医薬,農薬などの合成,綿糸布,羊毛などの洗浄,石鹸の製造,紙パルプの製造,水の軟化,ゴムの再生などがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報