日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェロシアン化カリウム」の意味・わかりやすい解説
フェロシアン化カリウム
ふぇろしあんかかりうむ
potassium ferrocyanide
黄血塩ともいう。ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウムが正しい名称である。通常は三水和物の形をとる。ドイツのディッペルJohann Konrad Dippel(1673―1734)によって、1710年初めて粗製品を得た。古くは動物の血液、内臓、皮革などを鉄屑(てつくず)とともに炭酸カリウムで融解する方法でつくられていた。工業的に、石炭ガス精製の際に生ずるプルシアンブルー(紺青)をアルカリで分解する方法がとられたこともあるが、現在では、硫酸鉄(Ⅱ)の水溶液に過剰のシアン化カリウムを反応させるか、シアン化物溶液中で鉄を電解酸化することによって製造される。含まれる錯イオン[Fe(CN)6]4-が不対電子をもたないため、フェリシアン化カリウムとは異なり反磁性である。
常温で安定な黄色の結晶であるが、100℃で結晶水を失って吸湿性の白色粉末となり、さらに高温では窒素とシアンを放って分解し、炭化鉄と炭素を残す。また、光によって分解する。水、アセトンには溶けるが、エタノール(エチルアルコール)、エーテルには溶けない。水溶液は苦味を有するが、加水分解はおこらないので毒性はない。しかし希硫酸と温めると有毒なシアン化水素を発生する。溶液に鉄(Ⅲ)塩を加えると濃青色の沈殿(プルシアンブルー、ベルリン青と俗称される)を生ずる。また、鉄(Ⅱ)塩で青白色、銅塩で赤褐色、銀塩または亜鉛塩で白色の沈殿を生ずる。これらの反応は定性分析に利用される。青写真の感光剤としても使われる。
[鳥居泰男]
フェロシアン化カリウム(データノート)
ふぇろしあんかかりうむでーたのーと
三水和物 | |
K4[Fe(CN)6]・3H2O | |
式量 | 422.4 |
融点 | (分解) |
沸点 | - |
比重 | 1.882~1.889(測定温度20℃) |
結晶系 | 単斜 |
溶解度 | 32.0g/100g(水25℃) |