硫化ナトリウム(読み)りゅうかなとりうむ(英語表記)sodium sulfide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

硫化ナトリウム
りゅうかなとりうむ
sodium sulfide

ナトリウム硫黄(いおう)の化合物。通常はナトリウムの一硫化物のことをいい、他はポリ硫化ナトリウムとよばれる。水酸化ナトリウムの水溶液硫化水素を飽和させて硫化水素ナトリウムの水溶液とし、当量の水酸化ナトリウムを加えて48℃以下で濃縮すると、九水和物が得られる。それ以上の温度では六水和物、5.5水和物などが晶出する。無水和物とするには水素気流中で加熱脱水する必要がある。ナトリウムと硫黄の直接反応によっても得られるが、工業的には無水硫酸ナトリウムを石炭粉末で熱還元する方法が行われる。白色または淡紅色の粉末。空気中で酸化されてチオ硫酸ナトリウムに変わる。水に溶け、エタノールエチルアルコール)にわずかに溶けるがエーテルには不溶。水溶液は強アルカリ性を呈し、硫黄を溶解して黄色のポリ硫化ナトリウムNa2Sx(xは2、3、4、5)を生成する。酸を加えると硫化水素を発生する。硫化染料の製造、ニトロ化合物の還元、皮なめしの脱臭剤、写真のセピア調色剤、陽イオンの系統的定性分析用試薬などに用いられる。

[鳥居泰男]


硫化ナトリウム(データノート)
りゅうかなとりうむでーたのーと

硫化ナトリウム
  Na2S
 式量  78.0
 融点  1180℃
 沸点  ―
 比重  1.856
 結晶系 立方
 溶解度 15.4g/100g(水10℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

硫化ナトリウム
りゅうかナトリウム
sodium sulfide

化学式 Na2S 。硫化ソーダともいう。無水塩は無色立方晶系結晶。吸湿性が強く,不安定で,空気に触れると変色する。衝撃あるいは急激な加熱により爆発することがある。比重 1.86,融点 950℃。水によく溶け,溶液は強アルカリ性を呈する。水溶液から 48℃以下で9水塩が析出する。加熱すると 50℃で結晶水に融ける。酸化されやすく,酸化するとチオ硫酸ナトリウムとなる。工業的には芒硝を無煙炭で還元して製する。硫化染料,人絹,スフなどの脱硫剤,染色,脱毛剤,クラフト紙,写真 (セピア調色用) ,ニトロ化合物の還元などに用いられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報