改訂新版 世界大百科事典 「ヌーディスト運動」の意味・わかりやすい解説
ヌーディスト運動 (ヌーディストうんどう)
nudism
裸体で生きることが真の生き方だと考え実践する人びとの運動。裸体生活を重視する考えは,古代ギリシア・ローマにすでに存在していたが,ヨーロッパにおいて裸体をタブー視したのはキリスト教であった。しかし,すでに13世紀のヨーロッパで,異端派の中には,裸体生活こそ〈楽園への復帰〉だと説き,実践する人びとが出現してきた。近代で最初の裸体主義運動は,20世紀初頭のドイツに始まった〈裸体文化Nacktkultur〉運動である。そこでは堕落した都市文明に背を向け,みずからの身体により〈自然に還る〉ことを実践することが主張された。この運動は第1次大戦後ドイツで急速に拡大したばかりか,チェコスロバキア,スイス,オランダ,スカンジナビア,オーストリア,フランスに広がった。1930年代にはアメリカ合衆国,カナダにも裸体主義者の団体が結成されている。ナチス政権により運動は弾圧されたが,1980年代半ば,西ドイツの150団体10万人を筆頭に,オーストリア,スイス1万人と世界26ヵ国に拡大している。国際組織として1953年にフランスのモンタリベで創設された〈国際自然主義連合Internationale Naturisten Föderation〉(本部はスイスのチューリヒ)がある。
執筆者:今 防人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報