改訂新版 世界大百科事典 「ハビマ」の意味・わかりやすい解説
ハビマ
Habima
ヘブライ語で舞台を意味するユダヤ人の劇団。1913年ウィーンでのシオニスト会議の席上,ツェマッハNahum Zemach(1887-1939)が,各国に分散するユダヤ人の心をパレスティナに結ぶ劇を創造することを思い立ち,4年後,ロシア革命の渦中のモスクワでわずか10名の芝居好きとともにこれを実行に移そうとした。スタニスラフスキーに援助を求めると,ワフタンゴフに指導をゆだね,後者の奔走で〈芸術座〉付属第4研究劇場が結成された。翌18年,ユダヤ作家の一幕物4本でデビューして注目を浴び,アン・スキ作《デュブク(怨霊物語)》の大成功で職業劇団として自立した。深い宗教的な心情をたたえたヘブライ語のせりふまわし,変化に富んだ舞台の色彩,独特なメーキャップ,写実的な演技と舞踊との絶妙なとり合せ,迫力のある群衆場面などで,1925-27年の欧米の公演では観客を魅了した。アメリカでの分裂後,残留組は28年パレスティナに戻り,58年以降国立劇場としてテルアビブで活動を継続した。シャローム・アライヘム,M.ブロートらが協力した。
執筆者:小宮 曠三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報