…遺伝子の自然および人為突然変異の研究はこの問題に大きな手がかりを与え,遺伝学が進化機構の解明に深くかかわることとなった。すでに1908年にハーディG.H.HardyとワインベルクW.Weinbergは安定した任意交配集団における遺伝子頻度と遺伝子型頻度の関係について,〈ハーディ=ワインベルクの法則〉とよばれる法則を発見していたが,30年代に入り統計学の進歩と相まって,淘汰・突然変異・繁殖様式・集団構造などを考慮に入れて集団の遺伝的構成の経時的変動を研究する集団遺伝学の基礎がR.A.フィッシャー,J.B.S.ホールデーン,ライトS.Wrightなどによって築かれた。最近は遺伝子やその支配形質の違いを分子レベル,すなわちDNAの塩基配列やタンパク質の一次構造の差異としてとらえ,その集団における挙動が盛んに研究されている。…
…例えば100個体の集団でA1とA2の二つの対立遺伝子が存在しA1A1,A1A2,A2A2の遺伝子型をもった個体がそれぞれ64,32,4個体存在した(つまりそれぞれの遺伝子型頻度が0.64,0.32,0.04)とすると,A1の遺伝子頻度は,A2の遺伝子頻度はである。交配が無作為に行われている集団で,突然変異,自然淘汰,機会的浮動などが働かなければ遺伝子頻度は一定であり,遺伝子型頻度は遺伝子頻度の二項式展開(先の例は(0.8+0.2)2=0.64+0.32+0.04)で与えられるというハーディ=ワインベルクの法則Hardy‐Weinberg’s law(1908)が成立する。実際の集団においては突然変異,自然淘汰,機会的浮動,移住などの要因により遺伝子は変化する。…
※「ハーディワインベルクの法則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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