交配(読み)こうはい(英語表記)crossing

翻訳|crossing

日本大百科全書(ニッポニカ)「交配」の解説

交配
こうはい
crossing
mating

2個体間で受粉あるいは受精を行うこと。交配は、両親の遺伝子型の異同は問題とせずに用いるが、とくに遺伝子型の異なる2個体間の交配は交雑とよばれる。

 家畜の交配は、まず育種の目標を確立し、それにふさわしい選抜を行い、その目標にかなった方法で行われる。したがって育種目標に応じて交配の仕方も異なる。遺伝的に遠く、相異なるものの長所をあわせもった雑種をつくりたい場合、すなわち特定形質の付与、あるいは両親のいずれかよりも優れた一代雑種(F1)をつくる雑種強勢を期待したい場合には、属を異にするものどうしの交配である属間交配、または同じ属に入るが種を異にする種間交配を行う。これらの場合、多くは雌雄とも、またはどちらか一方(哺乳(ほにゅう)類では雄、鳥類では雌)が不妊のためF1のみしか得られない。属間交配の実例としては、ウシとアメリカバイソン(アメリカヤギュウ)のF1でダニ熱に強いカタロ、アヒルとバリケンのF1で早熟早肥の土蕃鴨(トウホアンアー)などがある。種間交配では、雌ウマと雄ロバのF1で、強健で耐久力があり粗食、少食で役畜として賞用されているラバがある。

 異品種間の交配を品種間交配といい、単に交雑ともいわれる。交雑によってできた子を交雑種または雑種という。この交配は、一方の品種の特定形質の他方への付与、二つ以上の品種のもつ相異なる長所を有する新品種の作出、雑種強勢を期待する場合などに用いられる。例としては、イギリス在来馬とアラブなど東洋種のウマとの交配によってできたサラブレッド、ヒツジのメリノーとイギリス長毛種などとの交雑によってつくられた毛肉兼用種のコリデールがある。また、現在飼っている品種をほかのより望ましい品種に取り替えたいが経済的理由などで一挙にできない場合には、数代重ねて交配しその品種に近づける累進交配を行う。

 一方、非常に優れた形質を遺伝的に固定したい場合、とくに血縁関係にある個体どうしの交配である近親交配が行われる。この場合、能力の飛躍的向上はみられないが、遺伝子のホモ化する可能性がもっとも高く、その結果好ましくない劣性遺伝形質もホモ化され表現型に出ることもあるので、劣性遺伝子の摘発にも適した方法である。このように優れた個体が出現し、その形質集団を作出維持したいとき、その個体と同一の系統内での選抜による交配、すなわち系統交配が行われる。必然的にかなりの近親交配を伴うが、この方法によりホモ化され確立された形質集団を近交系という。

[西田恂子]

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デジタル大辞泉「交配」の解説

こう‐はい〔カウ‐〕【交配】

[名](スル)生物の雌雄を人為的に受精または受粉させること。雌雄が同品種の場合を同系交配、異品種の場合を異系交配(交雑)という。「新品種をつくるために交配する」

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「交配」の解説

交配
こうはい
mating; crossing

2つの個体間で受粉あるいは受精を行うこと。人為的交配はある目的 (たとえば家畜の場合,資質や能力を計画的,効率的に上させるなど) に向って選抜育種されて行われる。またこの際,双方の親の遺伝子型は問題にならない。交雑と同じような意味で使われることが多いが,この点で交雑とは区別すべきである。

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精選版 日本国語大辞典「交配」の解説

こう‐はい カウ‥【交配】

〘名〙 生物の雌雄を受精または受粉させ、次の世代を得る操作をいう。特に遺伝子型の異なる個体間の交配は交雑というが、一般には両者を混同して用いることが多い。かけあわせ。
※風俗画報‐一七二号(1898)動植門「是れ十姉妹と『ダンドク』の交配(カウハイ)より成りし雑種なり」

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世界大百科事典 第2版「交配」の解説

こうはい【交配 crossing】

生物の雌雄生殖器官合着(かけ合わせ)によって,次の世代ができること。交雑ともいうが,交雑は後述異系交配と同じ意味で用いることが多い。多くの動物では,交配によって子孫を作ることが古くから知られていた。しかし植物では一見行動を伴わないので,一般の植物にも雌雄性があってその交配によって種子ができることに近代まで気づかなかった。ただ,古代バビロニアでナツメヤシ雄株花粉によって雌株を結ぶことが知られていた例もある。

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