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突然変異 とつぜんへんい mutation

翻訳|mutation

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

突然変異
とつぜんへんい
mutation

ある生物の種類のなかで不連続的に異なった形質のものが突然に出現して,これが次代に遺伝する現象。 1882年に H.ド・フリースオオマツヨイグサで多くの突然変異を発見し,突然変異説を提唱した (1901) 。

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知恵蔵2015の解説

突然変異

遺伝子に生じる構造的な変化およびそれによって生じる表現型の変化。DNAヌクレオチド1つに起きた変異や遺伝暗号の読み間違えによるアミノ酸の変異から、染色体の一部がなくなったり、逆転したり、重複したりするといったものまで、様々なレベルの突然変異がある。自然突然変異率は1遺伝子当たり10万分の1〜100万分の1だが、放射線化学物質の影響によってこの率は上昇する。体細胞でも突然変異は起こるが、生殖細胞と違ってその変異が次世代に伝わることはない。突然変異はほとんどの場合、生存に有害であるが、まれに有益なものが生じ、自然淘汰によってその遺伝子が増殖することが進化の原動力になると考えられている。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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デジタル大辞泉の解説

とつぜん‐へんい【突然変異】

生物体に、親の系統になかった新しい形質が突然生じ、それが遺伝する現象。遺伝子または染色体の変化によって起こり、放射線の照射などで人為的に出現させることもできる。偶然変異

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百科事典マイペディアの解説

突然変異【とつぜんへんい】

遺伝子の性質や量に変化が生じること。結果として表現型形質に変化が生じた場合,生存にとって有害なことが多い。変化の生じる単位の違いによって,ゲノム突然変異染色体突然変異遺伝子突然変異の3つに分けられる。
→関連項目イネゲノム解析研究進化論ド・フリース変異マラー抑制遺伝子霊菌レトロトランスポゾン

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栄養・生化学辞典の解説

突然変異

 単に変異ともいう.遺伝子の変異.

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世界大百科事典 第2版の解説

とつぜんへんい【突然変異 mutation】

生物のもつ遺伝物質が量的・質的に変化すること,およびその変化によって生じた状態を指す。細胞核内の遺伝物質の突然変異(核性突然変異)は,変化が起こる遺伝物質の単位に応じて,ゲノム突然変異,染色体突然変異,遺伝子突然変異に分けられる。優性突然変異,劣性突然変異という区別は,突然変異がヘテロ二倍体で表現型の変化をもたらすか否かの違いをいうのであり,また常染色体突然変異,性染色体突然変異という区別は,突然変異が起こった染色体の違いをいうものであるが,いずれも突然変異の分類としては基本的ではない。

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大辞林 第三版の解説

とつぜんへんい【突然変異】

生物の形質に親と異なった形質が生じ、これが遺伝する現象。遺伝子の構造上の変化(遺伝子突然変異)、染色体の構造上の変化(染色体異常)が原因。放射線や化学物質により人工的に起こしたものを人為突然変異という。偶然変異。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

突然変異
とつぜんへんい
mutation

生物にみられる種々の変異のうち、遺伝子の量的または質的な変化によって生じた変異をいう。したがって突然変異は、それが致死作用をもっていない限りは子孫の細胞や個体に伝えられる。ただし、すでに存在する遺伝子の分離や遺伝的組換えによって新しい形質が現れる場合は含まれない。突然変異のことばを生物学上で初めて使用したのはオランダド・フリースH. de Vries(1848―1935)で、オオマツヨイグサOenotheraにみいだされた遺伝的な変わりものに対して名づけた(1901)。その後、アメリカのモーガンT. H. Morgan(1866―1945)が、ショウジョウバエDrosophilaで白眼の突然変異をみいだし(1910)、さらにマラーH. J. Muller(1890―1967)が、ショウジョウバエにX線を照射して人為的に突然変異を作成することに成功して(1928)、その後の遺伝学の発展に大きく貢献した。
 突然変異は、遺伝子の本体であるDNA(デオキシリボ核酸)の塩基の一つが他の塩基に置き換わった分子レベルの変化から、遺伝子の存在する染色体の構造や数の変化したものなど、種々の程度の変化が含まれる。[黒田行昭]

突然変異の分類

まず、DNAの一つまたは多数の塩基の置換base change、欠失deletion(またはdeficiency)、付加addition、逆位inversion、重複duplicationなどや塩基の枠組み移動flame shiftのような分子レベルでの変化がある。この場合は、そのDNAのもつ遺伝情報によってつくられる酵素やタンパク質がつくられなくなったり、活性が消失したりするような変化が現れる。このような一つの遺伝子の作用に影響を与えるような突然変異を遺伝子突然変異gene mutationまたは点突然変異point mutationという。
 遺伝子の存在する染色体の構造や数の変化によって生ずる突然変異を染色体突然変異chromosome mutationまたは染色体異常chromosome aberrationという。染色体の数の変化としては、染色体の全体のセット(ゲノム)が整数倍で増加する倍数性polyploidyや、ある特定の染色体のみが1本増加したり減少したりするトリソミーtrisomyやモノソミーmonosomy、数本の染色体が増減する異数性heteroploidyなどがある。また、染色体の構造の変化としては、1本の染色体のなかでの欠失や重複、逆位などのほか、ほかの染色体との間でのつなぎ換えとして転座translocationがある。
 これらの突然変異によって生じた変化が、形態的な形質として認められる場合は形態的突然変異morphological mutationまたは可視突然変異visible mutationという。また、生じた突然変異によって細胞や個体が生存できなくなるものを致死突然変異lethal mutationという。正常または野生型の細胞や個体が突然変異をおこす場合を前進突然変異forward mutationといい、突然変異をおこした細胞や個体が、同じ場所に突然変異をおこして、ふたたびもとの正常または野生型に戻る場合を復帰突然変異reverse mutation(またはback mutation)という。[黒田行昭]

突然変異の頻度

突然変異は、外から人為的に手を加えなくとも、自然の状態においてもある一定の低い頻度でおこる。これを自然突然変異spontaneous mutationというが、その頻度は生物の種類や遺伝子の種類によって異なり、1遺伝子座当り世代当りの頻度は、微生物では1億から10億回に1回の割合で非常に低いが、高等動植物では10万から100万回に1回の割合と比較的高い。ヒトでは四肢短縮症が10万回に5回くらい、血友病が10万回に3回くらい、無虹彩(むこうさい)症や小眼球症がそれぞれ100万回に1回くらいの割合でおこる。
 X線やγ(ガンマ)線、紫外線などの放射線や種々の変異原性化学物質、発癌(はつがん)物質などを作用させると、突然変異の頻度が人為的に上昇する。このような人為的に誘発された突然変異を誘発突然変異induced mutation(人為突然変異)という。そのときの突然変異の頻度は、使用した放射線の線量や照射時間、化学物質の濃度や処理時間などに比例して増大する。[黒田行昭]

突然変異の利用

突然変異が人為的につくられるようになってから、これらの突然変異を利用して、多くの生物の遺伝子の連関関係の研究や、種々の生体構成成分の合成や分解の生化学的代謝過程の解析が行われ、遺伝学、発生学、生物学の各学問分野における貢献は計り知れないものがある。また、突然変異の実際的な利用としては、植物の品種改良など育種学、農学、畜産学などの各分野における利用のほか、ペニシリン、ストレプトマイシンなど多くの抗生物質を多量に生産する自然および人為突然変異の菌株の開発や改良、特定のアミノ酸やタンパク質その他の有用物質を多量に生産する微生物の株の開発などにも利用されている。また1970年ごろから、食品や医薬品、農薬など環境中に存在する多数の変異原物質や発癌物質の人間に対する危険度を予測し、これらを環境中からできるだけ排除するために、微生物や哺乳(ほにゅう)類の培養細胞、昆虫、植物、実験動物など種々の生物の検出系を使って、これらの物質の突然変異性の調査も行われている。[黒田行昭]
『芦田譲治他編『遺伝と変異』(1958・共立出版) ▽山口彦之編『植物遺伝学4 形態形成と突然変異』(1977・裳華房) ▽山口彦之他著『突然変異育種』(1983・養賢堂) ▽R・H・タマリン著、木村資生監訳、福田一郎他訳『遺伝学』上下(1988・培風館) ▽森脇大五郎著『遺伝学ノート――ショウジョウバエと私』(1988・学会出版センター) ▽大島康行他著『新版 図説生物学』(1988・朝倉書店) ▽R・Y・スタニエ他著、高橋甫他訳『微生物学』上(1989・培風館) ▽黒田行昭編『遺伝学実験法講座5 動物遺伝学実験法』(1989・共立出版) ▽D・M・フライフェルダー著、志村令郎他訳『分子生物学』上(1989・化学同人) ▽岡田吉美著『プロテインエンジニアリング』(1989・東京化学同人) ▽江上信雄他編『メダカの生物学』(1990・東京大学出版会) ▽蓬原雄三著『イネの育種学』(1990・東京大学出版会) ▽近藤喜代太郎他著『人類遺伝学の基礎』(1990・南江堂) ▽柴忠義著『バイオテクノロジー実験操作入門』(1990・講談社) ▽名取俊二編『薬科分子生物学』(1990・講談社) ▽P・J・ラッセル著、太田次郎監訳、今泉佐枝子・清水久美子訳『現代遺伝学』(1990・オーム社) ▽根井正利著『分子進化遺伝学』(1990・培風館) ▽J・F・クロー著、木村資生・北川修・太田朋子訳『遺伝学概説』(1991・培風館) ▽G・エドリン著、清水信義監訳、伊藤文昭他訳『ヒトの遺伝学』(1992・東京化学同人) ▽藤巻宏他著『植物育種学 基礎編』『植物育種学 応用編』(1992・培風館) ▽蓬原雄三編著『育種とバイオサイエンス――育種学の新しい流れ』(1993・養賢堂) ▽D・M・フライフェルダー他著、川喜田正夫訳『分子生物学の基礎』第2版(1994・東京化学同人) ▽野沢謙著『動物集団の遺伝学』(1994・名古屋大学出版会) ▽太田次郎他編『遺伝のしくみ』(1995・朝倉書店) ▽黒田行昭編著『21世紀への遺伝学1 基礎遺伝学』(1995・裳華房) ▽山口彦之著『放射線生物学』(1995・裳華房) ▽大嶋泰治編著、駒野徹他編『酵母分子遺伝学実験法』(1996・学会出版センター) ▽山本隆一他編『イネ育種マニュアル』(1996・養賢堂) ▽三浦謹一郎編『分子遺伝学』(1997・裳華房) ▽百瀬春生編『分子遺伝学』(1997・丸善) ▽メイワン・ホー著、小沢元彦訳『遺伝子を操作する――ばら色の約束が悪夢に変わるとき』(2000・三交社) ▽コリン・パターソン著、馬渡峻輔他訳『現代進化学入門』(2001・岩波書店) ▽日本放射線技術学会監修、江島洋介・木村博編『放射線生物学』(2002・オーム社) ▽E・A・バージ著、高橋秀夫他訳『バクテリアとファージの遺伝学――分子生物学・バイオテクノロジーの基盤』(2002・シュプリンガー・フェアラーク東京) ▽スティーヴ・ジョーンズ著、ボリン・ヴァン・ルーン画、山元大輔訳『超図説 目からウロコの遺伝・DNA学入門――ダーウィンから遺伝子治療まで』(2003・講談社) ▽鵜飼保雄著『植物育種学――交雑から遺伝子組換えまで』(2003・東京大学出版会) ▽木村資生著『生物進化を考える』(岩波新書)』

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世界大百科事典内の突然変異の言及

【遺伝情報】より

…ある生物のもつ独特の構造や機能を作るために必要な情報は莫大な量に違いないが,この情報も結局はある程度の独立性をもった素情報ともいうべき〈遺伝子〉の集合として理解できることを示唆したのもG.J.メンデルの功績である。20世紀に入ってアメリカのT.H.モーガンらは,遺伝子のもつ情報の変化(突然変異)がおこること,およびその“異常な”情報がメンデルの法則に従って伝達することを示した。さらに彼らは,ある遺伝子の間ではかならずしも〈独立の法則〉があてはまらず,連鎖や交叉(こうさ)という現象がおこることを示し,その結果,一群の遺伝子は規則正しく直線状に配列していることが明らかにされた。…

【変異】より

…遺伝的変異は,例えばいろいろの血液型にみられるような変異で,多くの形態的,生理的形質がこのような遺伝的な変異をしめす。また,雌雄の違いやいわゆる突然変異も遺伝的変異にかぞえられる。非遺伝的変異には,ある1個体において形質が変化する場合と,個体間で形質に違いの現れる場合とがある。…

【ミュータント】より

…遺伝学における突然変異体のことで,オランダの植物学者ド・フリースの《突然変異説Die Mutantionstheorie》(1901‐03)に初めて使われた用語。とくにSFでは根本的な変異をもった生物の意味に使われ,人間のミュータントがしばしば題材となり,この新人類に対して旧人類が不安や恐怖を抱くといった設定が多い。…

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