改訂新版 世界大百科事典 「バイキング船」の意味・わかりやすい解説
バイキング船 (バイキングせん)
細長く両先端の反った船で,バイキングやその当時の北欧で使用された。このような船形の船は,前2000年にさかのぼる歴史をもつが,バイキング船に固有の特徴は竜骨の採用で,これによって帆走が可能になり,横波に対する安定が得られた。考古学に基づく実験では,大西洋横断に成功している。喫水が浅く,船のどちら側からでも岸辺に乗り上げることができる。両舷に同数のオール穴があり,船の大きさは左右1対のオール穴をもつ座席の数で表される。詩,法典などに知られる標準的なバイキング船は〈20座席〉と呼ばれ,したがって漕手だけで40人,総乗員数はその2倍とされる。漕手は戦士でもある。考古学上最も保存のよいノルウェーのゴクスタ出土の船(9世紀中ごろ)は〈座席〉数15,長さ23m。文献上知られる最大のバイキング船はオーラブ2世の〈長蛇号〉で,座席数32~34,全長37mと伝えられる。
執筆者:熊野 聰
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