船において,水面から船底の最深部までの垂直距離をいう。船の水面下に沈んでいる部分の深さであるが,これはまた水面下の部分の容積を示すものさしともなる。すなわち浮いている物体の水面下の容積と同容積の水の重量は,その物体の重量と等しいから,喫水の値を基に船の重量(排水量)を求めることができる。積荷を積載すればその重量に相当する分だけ喫水は増加し,燃料を消費すれば喫水は減少する。また船が海から河川に入ると,海水と淡水の比重差によって喫水が増加する。このように航海中に船の喫水は絶えず変化し,それによって航行上の諸性能も変化するため,船舶乗組員はつねに喫水に注意を払う。とくに水深の浅い海域や入港時,またはドックに入るときなどは,水深と喫水との差がわずかなため,座礁しないように細心の注意を払いバラスト水などを調節する。船の建造段階においても,船の大きさや予定航路の水深などを勘案して喫水を定めるが,これを計画満載喫水という。
船は必ずしも水平に浮くわけではなく,荷やバラスト水の積み方によって前後に傾斜する(これをトリムという)から,船首と船尾の喫水が読みとれるよう両玄のそれぞれの位置に船底からの寸法が記されている。また船内でも喫水が分かるような喫水計も考案されており,船首尾の喫水の値から船の排水量が求められるような計算表も各船に用意されている。さらに,船体の中央部には満載喫水線を標示するよう定められており,船はこの満載喫水線をこえて積荷を積載してはならない(図参照)。水面から船の甲板までの高さを乾玄(フリーボードfreeboard)というが,喫水が深くなれば乾玄は小さくなり,海が荒れた場合には危険になるため,〈国際満載喫水線条約〉によって満載喫水線の定め方が規定されている。これに従って日本では〈船舶安全法〉により,運輸省または船級協会(日本海事協会)が船の検査を行い満載喫水線を定めることになっている。この定め方は安全な乾玄を維持するという趣旨であって,タンカーのようにハッチが小さくかつ強固に閉鎖できる構造であれば,一般の貨物船よりも深い喫水が許される。また航行区域や季節によっても満載喫水は区別されており,海が荒れやすい冬季北大西洋が最も厳しく,熱帯淡水域が最も緩やかである。さらに木材を甲板に積載する場合には,木材による浮力を考慮して深い喫水が許される。満載喫水線の標示はおもに外洋航行船舶にだけ義務づけられており,沿岸付近だけの船やレジャー用の船などでは省略されている。
執筆者:翁長 一彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…(6)ダブリングdoubling スライバーを均整にするため多数のスライバーをいっしょにして引き伸ばし,元の太さと同程度のスライバーを作るが,多数のスライバーをいっしょにすることをダブリングという。(7)ドラフトdraft スライバーその他の繊維束を上下1対のローラーの間,その他の方法で引き伸ばして細くすること。初めのローラー表面速度(供給繊維の速度)をv1,最後のローラー表面速度(出口での繊維速度)をv2としたとき,v2/v1をドラフト比または単にドラフトと呼ぶ。…
※「喫水」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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