バタック族(読み)バタックぞく(その他表記)Batak

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バタック族」の意味・わかりやすい解説

バタック族
バタックぞく
Batak

インドネシア,スマトラ島北部のトバ湖周辺の高地に住むプロト・マレー系先住民。人口約 310万と推定される。バタック語はオーストロネシア語族の西インドネシア語派に属する。水稲陸稲,ヤムいも,さつまいもなどをつくる農耕民で,水牛,牛,馬を飼育し,湖で漁労に従事する。 19世紀まで比較的孤立していたが,まずイスラム教が,次いでキリスト教が伝えられた。しかし古くからインド文化の影響を受けてきたことは明らかである。バタック族は現在いくつかの下位集団 (トバ,アンコラ,カロ,マンダイリン,パクパク,シマルングンなど) に分れており,アンコラ,マンダイリン,シマルングンにはイスラム教が普及しているが,トバ,カロ,パクパクでは 19世紀以来キリスト教が信仰されている。以前にはトバの村は1つの外婚制父系親族集団から成っていた。母の兄弟の娘との婚姻が優先され,妻与者側と妻受者側の各リニージ間に贈り物と祭宴が交換される。このような親族体系は,二元的世界観と結びついている。相続は父から息子になされ,長子末子が優先される。祖先崇拝も行われ,女のシャーマンや男の呪医,祭司がいる。

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