化学辞典 第2版 「バナジル化合物」の解説
バナジル化合物
バナジルカゴウブツ
vanadyl compound
形式上VⅢ O+,VⅣ O2+,VⅤ O3+,VⅤ O2+などと,ハロゲンなどの陰性原子,または酸イオンが結合した形の化合物をいう.IUPAC命名法ではバナジルは許されず,VO2+はオキシドバナジウム(2+),VO2+はジオキシドバナジウム(1+),化合物は酸化物塩,またはこれら陽イオンの塩として命名する.命名法の例(化学式,通称→IUPACの名称の順):VO(SO4),硫酸バナジル(Ⅳ)→酸化硫酸バナジウム(Ⅳ),硫酸オキシドバナジウム(2+).【Ⅰ】塩化酸化バナジウム(Ⅲ):VⅢClO(102.39).V2O5とVCl3との混合物を封管中で加熱すると得られる.褐色の斜方晶系結晶.FeClO型の層状構造.水,希酸,希アルカリに不溶,濃塩酸に可溶.[CAS 13520-87-1]【Ⅱ】二塩化酸化バナジウム(Ⅳ):VⅣ Cl2O(137.86).V2O5,VCl3,VCl3Oの混合物を封管中で加熱すると得られる.緑色の結晶.密度2.88 g cm-3.潮解性がある.水溶液は青色を呈する.固体を加熱すると383 ℃ でVClOとVCl3Oに不均化する.媒染剤に利用される.[CAS 10213-09-9]【Ⅲ】三塩化酸化バナジウム(Ⅴ):VⅤ Cl3O(173.30).V2O5と Cl2 とを600~800 ℃ で反応させると得られる.ひずんだ正四面体型.黄色の液体.融点-79 ℃,沸点127 ℃.湿った空気中では加水分解される.CCl4,炭化水素などに易溶.[CAS 7727-18-6]【Ⅳ】酸化硫酸バナジウム(Ⅳ):VⅣOSO4(163.00).V2O5を70% 硫酸に溶かし,SO2で還元後,濃縮すると三水和物結晶が得られる.脱水すると無水物も得られるほか,一,五,六水和物もある.無水塩は緑色の粉末で,水に難溶.三~六水和物はいずれも青色の結晶で,水に可溶.固体を熱すると順次水和水の少ない水和物を経て無水物になる.還元剤,触媒,ガラスや陶器の着色,媒染剤などに用いられる.[CAS 27774-13-6]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報