ばね指(読み)ばねゆび

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ばね指」の意味・わかりやすい解説

ばね指
ばねゆび

指を屈曲あるいは伸展しようとすると中途でひっかかったように動かなくなり、無理に力を入れたり他動的に動かそうとすると、ばね仕掛けのように突発的に屈曲あるいは伸展の動作がおこるもの(弾撥(だんぱつ)現象)をいい、弾撥指ともよばれる。手指屈筋腱(けん)とその周囲組織の狭窄(きょうさく)性異常によって円滑な動きが障害されることによる。あらゆる年齢層にみられるが、とくに幼小児と50歳代を中心とする高年齢者に好発する。母指にもっとも多くみられ、幼小児では早く発症したものほど自然治癒の傾向が強く、過半数は3~4年で自然治癒する。したがって、副子を用いたりマッサージによって伸展矯正する保存療法を行いながら経過を観察し、治癒傾向がみられない場合には、狭窄原因となっている輪状靭帯(じんたい)を切開する手術が行われる。成人では女性が圧倒的に多く、リウマチ、膠原(こうげん)病、糖尿病のほか、外傷などが関与する場合もある。温熱療法やマッサージのほか、水溶性ステロイド剤の腱鞘(けんしょう)内注入によって軽快することもあるが、腱鞘切開が必要な場合もある。なお、弾撥現象が膝(ひざ)にみられる場合はばね膝(弾撥膝)とよばれ、外側円板状半月の損傷によるものが多い。

[永井 隆]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ばね指」の意味・わかりやすい解説

ばね指
ばねゆび
snapping finger

弾発指ともいう。手の指の中手指節間関節の手のひら側で腱鞘が肥厚して狭小化したり,屈筋腱が腫瘤状に肥大して,腱鞘の中を通る腱の伸展運動が制限され,それ以上運動させようとすると,爆発現象を呈するものをいう。曲げていた指を伸ばして広げようとすると,ある角度までくると動かなくなる。そこで他方の手で無理に指を伸展しようとすると,急にバネがきいたようにパッと伸びる。これを弾発現象という。過度の屈伸運動による腱への機械的刺激や,腱鞘の退行変性などによる腱鞘炎が原因と考えられている。乳幼児と中年過ぎの女性によくみられる。治療はステロイドの腱鞘内注射で軽快することもあるが,手術によって腱鞘を切開または切除するのが望ましい。

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世界大百科事典(旧版)内のばね指の言及

【腱鞘炎】より

…腱鞘炎は慢性化すると,腱鞘が肥厚して狭窄を起こして腱の動きを障害するようになる。これを狭窄性腱鞘炎というが,ばね指(指の屈伸が阻害され,曲げると伸びなくなり,むりに伸ばすとパチンと急に伸びる状態)が代表的な例で,中年の女性に多い。治療としては,原因疾患がある場合はその治療を行うとともに,安静にし,マッサージなどの対症療法を行う。…

※「ばね指」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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