手足などにある長い腱には,腱の動きを滑らかに行わせるトンネル様の構造がある。これを腱鞘という。腱鞘は腱が骨を有効に動かすための滑車の役割をし,腱が脱臼しないように制動しているが,腱鞘炎とは,この腱鞘に起こる炎症である。腱鞘炎には化膿性のものや結核性のものもあるが,むしろまれで,リウマチ性のものや,過度の運動で非特異的に炎症が生じて起こるもの(タイピストやピアニストにみられる)が多くみられる。症状としては,圧痛があり,知覚異常や運動障害が起こる。リウマチ性のものは,手指の腱鞘によくみられ,腫張によって手根管症候群を併発することもある。腱鞘炎は慢性化すると,腱鞘が肥厚して狭窄を起こして腱の動きを障害するようになる。これを狭窄性腱鞘炎というが,ばね指(指の屈伸が阻害され,曲げると伸びなくなり,むりに伸ばすとパチンと急に伸びる状態)が代表的な例で,中年の女性に多い。治療としては,原因疾患がある場合はその治療を行うとともに,安静にし,マッサージなどの対症療法を行う。これで多くの場合軽快するが,腱鞘切開が必要となることもある。
執筆者:杉岡 洋一
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手足の指骨に付着する長い腱にはトンネル構造の腱鞘があって腱の動きを潤滑にしている。この腱鞘の炎症を腱鞘炎という。日常多くみられるのは腱の使いすぎによって発生するド・ケルバンde Quervain腱鞘炎である。手をよく使う人、とくに婦人に多くみられ、手関節の母指側で長母指外転筋、短母指伸筋に発生することが多く、手関節の橈骨(とうこつ)側から前腕の橈骨側に、母指の運動時に疼痛(とうつう)がおこる。また、母指の運動時に音がする軋音(あつおん)性腱鞘炎や、腱鞘の肥厚が強くなって母指の屈伸が困難になる狭窄(きょうさく)性腱鞘炎もある。ひょうそで化膿(かのう)が腱鞘まで広がると化膿性腱鞘炎となる。結核性腱鞘炎もあるが、現在はまれなものとなった。なお、ばね指も腱鞘の慢性炎症で発生することがある。
治療は、手をなるべく使わないようにすることが必要であり、副腎(ふくじん)皮質ホルモンの局所注射が奏効する。手術を要することは少ないが、狭窄性のものなどでは、腱鞘切開を行わなければ治らないことがある。
[永井 隆]
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