改訂新版 世界大百科事典 「バルト楯状地」の意味・わかりやすい解説
バルト楯状地 (バルトたてじょうち)
Baltic shield
北ヨーロッパのスウェーデン,フィンランド,ロシア北西端(カレリア,コラ半島),およびノルウェー,デンマークの一部を含む先カンブリア時代の変成岩,花コウ岩が広く分布している安定地域(クラトン)をいう。バルト楯状地の西側には,ノルウェーからイギリス北部に続く古生代前期のカレドニア造山帯がある。南東側は広大なロシア平坦地Russian platformとなり,先カンブリア時代の基盤岩の上を古生代以降の堆積岩層がひろくおおっている。ウラル山脈以西,カスピ海と黒海の北岸,カルパチ山脈北縁からポーランド中部を通ってバルト海に達するロシア平坦地とバルト楯状地の両者を含む広大な安定地域は,古くは原ヨーロッパUr-Europaとよばれたヨーロッパ大陸の古い核で,この周囲に古生代以降の造山帯が付加され,現在のヨーロッパが形成されたといわれる。北ヨーロッパは第四紀の氷河で削られたため,岩石の新鮮な露頭が多く,フィンランドとスウェーデンには美しい赤色のラパキビ花コウ岩やミグマタイトが広く露出し,花コウ岩・片麻岩研究の発祥の地となった。
執筆者:佐藤 信次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報