楯状地(読み)タテジョウチ(英語表記)shield

翻訳|shield

デジタル大辞泉 「楯状地」の意味・読み・例文・類語

たてじょう‐ち〔たてジヤウ‐〕【×楯状地】

先カンブリア時代の基盤岩が広く露出している低く平らな地域長い間浸食作用で平坦化され、楯を伏せたようになだらかで、大陸中核をなす。カナダ楯状地など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「楯状地」の意味・読み・例文・類語

たてじょう‐ちたてジャウ‥【楯状地】

  1. 〘 名詞 〙 大陸の地殻のうち、きわめて古く安定した部分。陸地の核心部を構成し、カンブリア紀以来造山運動は生じていない。その地形の断面は楯を伏せた形に似てなだらかで、高い山脈はない。バルト楯状地カナダ楯状地など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「楯状地」の意味・わかりやすい解説

楯状地 (たてじょうち)
shield

古く先カンブリア時代に成立した安定地塊で,古生代以後の堆積岩類をほとんど載せていない地域。地形的には楯を伏せたような形にみえるところからこの名称が生じた。最古の大陸地殻であって,激しく変形・断裂を受けた複雑な構造の結晶片岩片麻岩,花コウ岩などで構成されるが,古生代以後はまったく安定化し,全般的な昇降運動を経験したにすぎないので,わずかに堆積岩類を載せている場合でも,その構造はほとんど水平でまったく乱されていない。褶曲,断裂,火成活動などの著しい造山帯(変動帯)とはきわめて対照的な地域である。先カンブリア時代の岩石の年代測定が進み,楯状地の岩石の年齢が明らかになるにつれ,一つの楯状地でもその中心部ほど成立年代の古いことがわかってきた。この最も古い部分を大陸核と呼ぶ。ドイツの地質学者シュティレH.Stilleは1934年,世界最古の大陸塊として五つの地域を地球上に設定し,原剛塊Urkratonと名づけた。これらは,ルシアスカンジナビア大部分とロシアの一部),アンガリア(シベリア中部),ラウレンティア(カナダとグリーンランドの大半),シニア(中国東部),ゴンドワニア(南アメリカ,アフリカ,インドなど)と呼ばれたが,大部分が楯状地である。今日知られている最古の岩石はカナダ楯状地に属するグリーンランド西岸の片麻岩で,その年齢は38億~39億年と測定されている。最近,オーストラリア西部の楯状地に分布する28億年前の堆積岩の中から,42億年という年齢のジルコンが報告された。このことは,42億年前当時すでに岩石からなる固体地殻が存在していたことを示すものとして重要である。
安定地塊
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「楯状地」の意味・わかりやすい解説

楯状地(たてじょうち)
たてじょうち

主として先カンブリア時代の基盤岩類が広く地表に分布する地域をいう。楯状地(じゅんじょうち)ともいう。地形的には一般に楯を伏せたように緩い凸面をなすため、この名がある。しかし、カナダ楯状地はハドソン湾が中心部を占め、逆に凹面をなす。

 楯状地は、一つの造山運動で形成されたものではなく、始生代と原生代の2地質区に大別される。前者は塩基性火山岩や花崗(かこう)岩からなるグリーンストーン・花崗岩地域と花崗岩質片麻(へんま)岩からなる高変成度地域とに分けられる。始生代区が安定化したのち、原生代前期および中期に造山運動がおこり(ハドソン造山およびグレンビル造山)、堆積(たいせき)物起源の変成岩や再変動を受けた始生代基盤からなる原生代区が付加した。すなわち、大陸は成長した。

 有名な楯状地としてはカナダ楯状地、バルト楯状地、アフリカ楯状地などがある。卓状地とともに安定陸塊を形成する。

[岩松 暉]



楯状地(じゅんじょうち)
じゅんじょうち

楯状地

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「楯状地」の意味・わかりやすい解説

楯状地【たてじょうち】

先カンブリア時代の基盤岩が広大な面積に露出し,楯を伏せたような地形をしている地域。シールドとも。安定した古期大陸の中心部に存在し,古生代以降,地殻の運動としては穏やかな隆起・沈降だけがみられる。カナダ楯状地,アンガラ楯状地(ユーラシア大陸北東部),バルト楯状地のほかアフリカ,オーストラリア,南米北東部の楯状地などが知られている。
→関連項目剛塊始生代先カンブリア時代南極大陸バルト楯状地

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「楯状地」の意味・わかりやすい解説

楯状地
たてじょうち
shield

先カンブリア界 (→先カンブリア時代 ) の基盤岩類が広く分布する地域。カナダ楯状地,インド楯状地,バルト楯状地などがあり,大陸の中核部を形成している。それを取巻くように大陸周辺部で古生代以降の新しい造山帯が発達している。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

岩石学辞典 「楯状地」の解説

楯状地

地殻の下部に広がっている剛性で固化した部分で,ほとんど全部が結晶質の先カンブリア紀の岩石からできている.例えばカナダ楯状地やバルト海楯状地のように堆積層でゆるく覆われた基底の岩石類が露出した広大な地域である[Holmes : 1965].

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の楯状地の言及

【先カンブリア時代】より

…化石の産出にとぼしいこと,変成作用による初生的特徴が失われていること,連続的露出がないことなどの理由から先カンブリア時代の年代区分は顕生代とちがって,もっぱら放射年代に頼らざるをえない。カナダ楯状地には先カンブリア時代の地質系統が広く分布し,その研究は進み,先カンブリア時代細分の模式地となっている。カナダ地質調査所では,古い方からケノーランKenoran造山(約25億年前),ハドソンHudson造山(約18億年前),グレンビルGrenville造山(約8億年前)の3回の造山運動を識別し,これらによって先カンブリア時代を4時期に細分している。…

※「楯状地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android