改訂新版 世界大百科事典 「バレダオスタ」の意味・わかりやすい解説
バレ・ダオスタ[州]
Valle d'Aosta
イタリア最北西端の州。面積3263km2,人口12万2868(2004)。西のフランス,北のスイスとの国境はモン・ブラン,マッターホルン,モンテ・ローザなどがそびえ,文字どおり高峰に囲まれた谷(バレは〈谷〉の意)に位置するイタリア最小の州である。州都はアオスタ。山岳地域のため,おもに牧畜,林業が中心であったが,19世紀以後,イタリアのなかでは比較的豊富でさまざまな鉱物資源(鉄,石炭,アンチモン,鉛など)に恵まれているため,急速に採掘および製錬加工が行われるようになり,なかでもコーニェCogneの製鉄業は重要であった。現在は鉱業の占める地位は相対的に低下し,代わって化学,木材加工などの製造業が伸びている。豊富な水力は北部工業地域へのエネルギー源となっている。近年はアルプスをひかえて観光開発が盛んで,クールマユール,サン・バンサンなど多くの観光・保養地がある。11世紀からイタリア統一まで,おおむねサボイア家の領地であった。第2次大戦後特別州として自治を認められ,フランス語も公用語とされている。
執筆者:萩原 愛一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報