ヒトサル痘

内科学 第10版 「ヒトサル痘」の解説

ヒトサル痘(ポックスウイルス)

b.ヒトサル痘
概念
 サル痘ウイルス(monkeypox virus)(ポックスウイルス科オルソポックス属)による全身性感染症である.人におけるサル痘ウイルス感染症はヒトサル痘(human monkeypox)とよばれる.
病原体
 サル痘ウイルスによる.
感染経路
 ヒトはサル痘ウイルス感染動物に直接接触して感染したり,サルを捕獲し食用に供する際に感染する.ヒトサル痘患者に接触して感染(ヒト-ヒト感染)する場合もある.
疫学
 サル痘ウイルスの宿主は中央~西アフリカに分布する地リス類などの齧歯類である.ヒトサル痘は中央~西アフリカの熱帯雨林地域に限られた風土病である.しかし,2003年5
月から6月に,米国でヒトサル痘が流行した(71名のヒトサル痘患者が報告された).西アフリカからペットとして輸入された齧歯類が感染源であった.サル痘ウイルス感染症は,輸入感染症の1つとして注目される.
臨床症状
 潜伏期間は7~21日で,発熱リンパ節腫脹,咽頭痛や咳などの呼吸器症状,発疹が出現する.症状だけからはサル痘ウイルスを,天然痘と区別できない(図4-4-7B).致死率は約10%程度であると考えられる.特に乳幼児では重症化することが多い.
診断・治療予防
 鑑別診断は,天然痘と同じである.診断には,ウイルス抗原の検出同定が重要である.ウイルス分離法,PCR法,病理組織学的ウイルス抗原検出法が用いられる.特異的な治療法は確立されていない.対症療法主体となる.天然痘ワクチンが有効である.[西條政幸]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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