出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
病気の症状を和らげ,苦痛を軽減するための治療。病気の原因除去を目的とした原因療法causal therapyと区別される。たとえば,風邪薬は発熱,頭痛,鼻水,咳などの症状を改善させるための対症療法であって,風邪の原因であるウイルスの活動を抑える原因療法ではない。一方,細菌によって肺炎をおこした場合の抗生物質の使用は,原因である細菌の繁殖や活動を抑制する目的であり,原因療法である。また,癌の手術的除去や放射線治療は原因療法に含まれる。対症療法は重要な治療法であるが,原因療法を必要としない,あるいは有効な原因療法のない疾患でない場合は,あくまで原因療法の補助として行われるべきである。多くの疾患は症状の自覚から始まるが,原因が明らかにされないまま対症療法を続け,早期発見・早期治療の機会を失うことのないよう注意を要する。民間の薬局で医師の処方なしに市販される薬の多くは,対症療法を目的としたものである。
→医療
執筆者:工藤 翔二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ある病気の患者を治療するとき、その病気の真の原因に対して治療する原因療法に対し、その病気の症状として現れてきたものに対して治療を行う場合を対症療法という。たとえば、肺結核で微熱が続いている患者に解熱薬を投与するような場合を対症療法といい、ヒドラジッドやリファンピシンなどの抗結核剤を投与し、真の原因である結核を治療することを原因療法という。このほか、原因療法には、感染症に対する化学療法をはじめ、内分泌疾患に対するホルモン補充療法や、腫瘍(しゅよう)に対する摘出術などが含まれ、対症療法には、疼痛(とうつう)に対する鎮痛薬の投与や神経ブロック、下痢に対する止痢剤の投与など、きわめて多くの種類が含まれ、現状では原因療法よりむしろ対症療法に頼らざるをえない場合が多い。しかし、対症療法によって症状を抑制するため診断や予後判定を誤らせるばかりでなく、薬物による副作用や医原性疾患をおこす可能性もあるので、治療に際しては注意しなければならない。
[柳下徳雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…内科的治療で最もたいせつなことは,生体に備わった自然治癒力を助長して,早く治癒にみちびくことである。 薬物療法病気を起こした原因を取り除くことを目的とした原因療法と,病気の主症状を抑えて治癒を促進する対症療法とがある。原因療法には感染菌を死滅させたり,成育を抑える抗生物質や寄生虫を駆除する薬剤がその代表である。…
※「対症療法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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