対症療法
たいしょうりょうほう
ある病気の患者を治療するとき、その病気の真の原因に対して治療する原因療法に対し、その病気の症状として現れてきたものに対して治療を行う場合を対症療法という。たとえば、肺結核で微熱が続いている患者に解熱薬を投与するような場合を対症療法といい、ヒドラジッドやリファンピシンなどの抗結核剤を投与し、真の原因である結核を治療することを原因療法という。このほか、原因療法には、感染症に対する化学療法をはじめ、内分泌疾患に対するホルモン補充療法や、腫瘍(しゅよう)に対する摘出術などが含まれ、対症療法には、疼痛(とうつう)に対する鎮痛薬の投与や神経ブロック、下痢に対する止痢剤の投与など、きわめて多くの種類が含まれ、現状では原因療法よりむしろ対症療法に頼らざるをえない場合が多い。しかし、対症療法によって症状を抑制するため診断や予後判定を誤らせるばかりでなく、薬物による副作用や医原性疾患をおこす可能性もあるので、治療に際しては注意しなければならない。
[柳下徳雄]
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たいしょう‐りょうほう タイシャウレウハフ【対症療法】
〘名〙 病気の原因に対する治療ができない場合、また急を要する場合などに、その結果である病気の症状に注目して、これを除いて治療しようとする方法。また、比喩的に、根本的に解決するのではなく、現われた状態に応じて行なう
処置のしかたをいう。⇔
原因療法。
※己が罪(1899‐1900)〈菊池幽芳〉中「旧来の治療法は単に対症療法(タイシャウリャウハフ)と申しまして、〈略〉至って不完全なものでありまして」
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対症療法
たいしょうりょうほう
symptomatic treatment
たとえば熱があれば冷やし,食欲不振には消化薬を用いるように,症状を個々に軽減,消失させようとする試みから生れた治療法。末梢的な治療法と軽視されることもあるが,軽症の場合や心身症の傾向の強い症例など,原因の不明なもの,あるいは原因除去の困難な場合は,患者の訴える症状を軽減し,自然回復能力を助長するほか,条件反射などの立場からみれば,悪循環の処理法として新しい意義も見出されている。
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たいしょう‐りょうほう〔タイシヤウレウハフ〕【対症療法】
1 病気の原因に対してではなく、その時の症状を軽減するために行われる治療法。痛みに鎮痛剤を与えるなど。姑息的療法。⇔原因療法。
2 根本的な対策とは離れて、表面に表れた状況に対応して物事を処理すること。「対症療法では問題は解決しない」
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対症療法
病因を取り除く治療法に対し,症状を軽減するための治療法.
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たいしょうりょうほう【対症療法 expectant therapy】
病気の症状を和らげ,苦痛を軽減するための治療。病気の原因除去を目的とした原因療法causal therapyと区別される。たとえば,風邪薬は発熱,頭痛,鼻水,咳などの症状を改善させるための対症療法であって,風邪の原因であるウイルスの活動を抑える原因療法ではない。一方,細菌によって肺炎をおこした場合の抗生物質の使用は,原因である細菌の繁殖や活動を抑制する目的であり,原因療法である。また,癌の手術的除去や放射線治療は原因療法に含まれる。
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世界大百科事典内の対症療法の言及
【医療】より
…内科的治療で最もたいせつなことは,生体に備わった自然治癒力を助長して,早く治癒にみちびくことである。 薬物療法病気を起こした原因を取り除くことを目的とした原因療法と,病気の主症状を抑えて治癒を促進する対症療法とがある。原因療法には感染菌を死滅させたり,成育を抑える抗生物質や寄生虫を駆除する薬剤がその代表である。…
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