改訂新版 世界大百科事典 「ヒン文化」の意味・わかりやすい解説
ヒン文化 (ヒンぶんか)
1950年に,A.P.オクラードニコフによって提唱されたバイカル地方新石器編年の第1期で,前5千年紀に比定されている。1934年に発見されたチャスティエChastye谷の埋葬墓とヒンKhin谷の埋葬墓の2基の出土遺物をもとにヒン文化が設定された。いずれも配石をもつ埋葬墓で,楕円形の墓壙内に,チャスティエ墓では北北西に頭位をもつ遺体が,ヒン墓では明らかな伸展位の遺体が発見された。副葬品には,側抉基の石刃鏃を含む石器群と骨製尖頭器が含まれている。この特異な形態の側抉基の石刃鏃は,ザバイカル地方,モンゴル,西シベリア,中央アジアへとその広がりをもっている。沿バイカルでは,土器を伴わないが,中央アジアでは,土器を伴出する。最近,M.P.アクショーノフとG.I.メドベージェフは,沿アンガラ地方の中石器文化を編年し,前期(バダイ・ベルホレンスク期),後期(ウスチ・ベーラヤ期とヒン期)の2期に分け,後期の後半にヒン期を位置づけた。後期の特徴的な遺物群には,石鏃,葉形尖頭器,彫器,磨製石斧,石錘,骨製釣針,角製尖頭器などがあげられる。
→石刃鏃文化
執筆者:加藤 晋平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報