石刃鏃文化(読み)せきじんぞくぶんか

改訂新版 世界大百科事典 「石刃鏃文化」の意味・わかりやすい解説

石刃鏃文化 (せきじんぞくぶんか)

石刃に簡単な加工を加えて鏃とした石刃鏃を特徴とする文化。中石器時代から新石器時代初期にかけてユーラシア大陸北部に広く認められる。日本列島では,北海道東・北部に限って存在し,縄文時代早期浦幌式土器,女満別式土器などを伴う。アジア大陸側では,シベリア,中国東北,モンゴルの各地に存在し,数多くの遺跡が報告されている。細かく見ると,この文化には時代性と地域性の差を認めることができる。シベリアの最初期の石刃鏃は幅1cm以下の細石刃に作られたもので,土器を伴わない中石器時代段階のものである。アンガラ川チェリョムシニク遺跡が代表例である。次に土器出現後の新石器段階の石刃鏃は,幅1cm前後以上の小型石刃から作られたもので,これには明確な地域性を認めることができる。バイカル湖以西の地では,沿バイカルのヒン文化,オビ川上流アンドレーエフ湖遺跡,中央アジアのケルチェミナール文化の石刃鏃は,その柄が片抉りのものである。ザバイカル,アムール川上流,内・外モンゴルにかけて分布する石刃鏃は,斜めの柄をもつものである。これら以東のシベリア各地(アムール川中・下流域,ヤクート地方,極東地方)そして中国東北では,平らな柄,円い柄,作りだしの柄などの石刃鏃が分布し,北海道にまで達している。これらの石刃鏃と伴出する土器も地域性をもっている。アムール川中・下流域,極東地方,中国東北の土器はすべて平底であるが,他の地域は丸底ないし尖底土器である。平底の土器グループは,中国遼寧省のものでは櫛目ジグザグ文をもち,黒竜江省,ロシア・アムール川中流域では粘土紐を貼りつけた文様をもち,北海道,サハリンでは絡条体圧痕文などが施文され,地域性を鮮明にしている。平底土器をもつ石刃鏃文化は,銛などの骨角器,石錘そして自然遺物として魚骨を出土するなど,漁労活動が盛んであることを示し,ほぼ7000~5000年前の文化と推測される。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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