改訂新版 世界大百科事典 「ビラノーバ文化」の意味・わかりやすい解説
ビラノーバ文化 (ビラノーバぶんか)
イタリア北部ボローニャの西方約8kmにあるビラノーバVillanova遺跡を標準遺跡とするイタリア鉄器時代初期の文化。その源は,後期ミュケナイ時代第III期に相当する前12世紀ころ,つまり青銅器時代から鉄器時代の移行期にあたる先ビラノーバ文化にさかのぼり,このビラノーバ文化が形成されるのは前11世紀ころで,前8世紀まで続く。文化の特徴は,火葬による遺灰を入れる骨壺,片刃のかみそり,安全ピン(フィブラ),青銅製のベルトや小像にある。骨壺は二つの円錐形底部を合わせたような器形を有するものと,家形があり,いずれも石板で囲まれた墓に安置された。器表にはスワスティカ(卍形)文や連続雷文などの沈線文や隆線文が付され黒褐色の光沢を有する。蓋は盃形と青銅製兜を模したタイプがある。住居址は発見されていない。通常3期に分類され,第1期は北イタリアを中心とするが,第2期以降トスカナ地方,ラチオ地方,それにカンパニア地方にまで広がる。そして,北方のハルシュタット文化にも影響を与えた。ビラノーバ文化は,エトルリア文化の先駆をなすことから先エトルリア文化とも称され,イタリアの初期鉄器文化の中で最も重要な位置を占めている。
執筆者:青柳 正規
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報