ピロプラズマ類(読み)ぴろぷらずまるい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピロプラズマ類」の意味・わかりやすい解説

ピロプラズマ類
ぴろぷらずまるい

アピコンプレックス門胞子虫綱ピロプラズマ亜綱ピロプラズマ目Piroplasmidaの動物群で、ヒトおよび家畜を含む脊椎(せきつい)動物のおもに赤血球内に寄生し、宿主(しゅくしゅ)に病害を与えるものが多く、医学・獣医学上重要なグループである。この目には3科がある。まず、バベシア科のものは比較的大形で、赤血球内で増殖し、ダニが媒介する。赤血球内の虫体は、西洋ナシ状、卵円形などの形態をとり、大きさ2~5マイクロメートルくらいである。ヒトに感染例のあるバベシアBabesia spp.のほか、ウシ、イヌ、ネコ、ネズミ類にそれぞれ寄生するバベシア・ビゲミナB. bigemina、バベシア・カニスB. canis、バベシア・フェリスB. felis、バベシア・ミクロチアB. microtiaなどがあり、いずれも宿主に発熱、貧血、黄疸(おうだん)、肝脾(かんひ)の腫大(しゅだい)など重大な障害を与える。また、タイレリア科のものは小形で、リンパ球、組織球、赤芽球などで増殖し多数の1~2マイクロメートルくらいのメロゾイト(娘虫)を生ずるが、これらはさらに赤血球に侵入して1~2マイクロメートルの棒状、卵円形など多形性の赤内型虫体となる。ダニが媒介する。ウシに寄生して発熱、貧血、黄疸、リンパ節腫脹(しゅちょう)など重篤な症状を引き起こすタイレリア・パルバTheileria parvaのほか、ウシに寄生するタイレリア・ゼルゲンチT. sergenti、タイレリア・ムタンスT. mutansラクダに寄生するタイレリア・カメレンシスT. camelensis、シカに寄生するタイレリア・カルビT. cerviなどがある。バベシア症とタイレリア症には、キノリンアクリジン、ジアミジンなどの誘導体が有効である。第三のダクチロソーマ科のものは、カエルやトカゲなどの変温動物の赤血球に寄生するが、媒介動物の種類、その他不明の点が多い。

小山 力]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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