アクリジン(読み)あくりじん(英語表記)acridine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アクリジン」の意味・わかりやすい解説

アクリジン
あくりじん
acridine

環内に窒素原子を含む複素環式芳香族化合物の一つ。コールタールから得られるアントラセン油中に少量存在する。実験室ではアクリドンの還元やジフェニルアミン-2-カルバルデヒドの環化により調製できるが、工業的にはアントラニル酸カルシウムを加熱したのち水素気流中で亜鉛末を作用させて製造する。淡黄色の結晶で、蒸気は皮膚や粘膜を刺激し、吸入すると咳(せき)、くしゃみが出る。また、発癌性(はつがんせい)が疑われている。水にはわずかしか溶けないが、多くの有機溶媒にはよく溶ける。水溶液は青色蛍光を発する。弱い塩基性をもつ。化学的に安定な物質で、強い酸や強いアルカリと高温で処理しても変化しない。

 アクリジンイエローやアクリジンオレンジなどの染料アクリノールなどの殺菌剤、医薬品はこの化合物の誘導体である。

[廣田 穰]


アクリジン(データノート)
あくりじんでーたのーと

アクリジン
分子式C13H9N
分子量179.2
融点111℃
沸点345~346℃
溶解度1g/20kg(冷水

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アクリジン」の意味・わかりやすい解説

アクリジン
acridine

コールタールから取出される淡黄色の結晶。蒸気は刺激性。融点 110~111℃,沸点 345~346℃,冷水 20kgに 1g溶け,青色のケイ光を発する。有機溶媒によく溶ける。コールタールの脱晶アントラセン油から分離するか,アントラニル酸カルシウムの加熱によって工業的に生産され,精製は昇華性を利用して行う。水素供与性有機溶媒中で,紫外線により還元されるが,酸,アルカリには比較的安定。アクリジン系染料や医薬品の有機合成原料,生体組織の部分染着試薬に用いられる。チオシアン酸イオンの存在で不溶性の塩をつくるので,チオシアン酸イオンの分析試薬としても用いられる。

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