日本大百科全書(ニッポニカ) 「アクリジン」の意味・わかりやすい解説
アクリジン
あくりじん
acridine
環内に窒素原子を含む複素環式芳香族化合物の一つ。コールタールから得られるアントラセン油中に少量存在する。実験室ではアクリドンの還元やジフェニルアミン-2-カルバルデヒドの環化により調製できるが、工業的にはアントラニル酸カルシウムを加熱したのち水素気流中で亜鉛末を作用させて製造する。淡黄色の結晶で、蒸気は皮膚や粘膜を刺激し、吸入すると咳(せき)、くしゃみが出る。また、発癌性(はつがんせい)が疑われている。水にはわずかしか溶けないが、多くの有機溶媒にはよく溶ける。水溶液は青色の蛍光を発する。弱い塩基性をもつ。化学的に安定な物質で、強い酸や強いアルカリと高温で処理しても変化しない。
アクリジンイエローやアクリジンオレンジなどの染料、アクリノールなどの殺菌剤、医薬品はこの化合物の誘導体である。
[廣田 穰]