キノリン(読み)きのりん(英語表記)quinoline

翻訳|quinoline

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キノリン」の意味・わかりやすい解説

キノリン
きのりん
quinoline

環内に窒素原子を含む複素環式化合物の一つ。1-アザナフタレンともいう。石炭の乾留により得られるコールタール中に存在する。弱い塩基性をもっている。

 ニトロベンゼンアニリングリセリンの混合物に濃硫酸を加えて加熱すると得られる。この反応は1880年にオーストリアのスクラウプZdenko Hans Skraup(1850―1910)により最初に報告されたので、「スクラウプ反応」または「スクラウプのキノリン合成」とよばれている。

 不快臭をもつ無色の液体で、熱水、薄い酸、エタノールエチルアルコール)、エーテルなどに溶ける。ベンゼン環とピリジン環とが縮合した構造をもっていて、還元はピリジン環でおこり、強く酸化するとベンゼン環のほうが壊れてキノリン酸になる。また、ニトロ化などの求電子置換はベンゼン環上におこりやすく、アミノ化などの求核置換はピリジン環上におこる。アルカロイドおよびキノリン染料の重要な合成原料となるほか、分析試薬としての用途をもつ。

[廣田 穰]



キノリン(データノート)
きのりんでーたのーと

キノリン

 分子式 C9H7N
 分子量 129.2
 融点  -15.6℃
 沸点  237.10℃
 比重  1.0929(測定温度20℃)
 屈折率 (n)1.62928
 解離定数 Kb=3.16×10-5

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キノリン」の意味・わかりやすい解説

キノリン
quinoline

コールタール中に存在する不快な臭いをもつ,無色の弱塩基性液体。沸点 238℃。キノリン染料,アルカロイド,医薬品の合成原料。塩酸溶液中にヨウ化カリウム存在下で Bi3+ ,Sb3+ ,Sn4+ ,Zn2+ ,Pb2+ などの金属イオンと不溶性塩をつくるので,これらの金属イオンの定量分析に用いられる。また硝酸溶液中にチオシアン酸アンモニウムが存在すると,Fe3+ ,Zn2+ ,Cd2+ ,In3+ などの金属イオンの不溶性塩をつくるので,この性質はこれらの金属イオンの定量に利用される。アニリン,グリセリン,ニトロベンゼンを硫酸存在下で反応させて得られる (スクラウプ法) 。

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