改訂新版 世界大百科事典 「フィダーイー」の意味・わかりやすい解説
フィダーイー
fidā'ī
〈宗教・政治的目的のために一身を犠牲にして戦う者〉を意味するアラビア語。アラムートを本拠としたイスマーイール派のニザール派において,主命により一身を賭して同派の宗教・政治上の敵を暗殺した者を指した。フィダーイーによりセルジューク朝の宰相ニザーム・アルムルクをはじめ多くの名士たちが暗殺された。彼らは使命に赴く前に麻薬ハシーシュ(大麻)を飲まされたとも伝えられるが確証はない。
近年パレスティナ人コマンドは,自らをフィダーイーと呼んでいる。この語のペルシア語複数形をフェダーイーヤーンといい,フェダーイーヤーネ・イスラームは極右イスラム秘密団体として1943年から12年間暗躍した。71年にはマルクス=レーニン主義を奉じるフェダーイーヤーネ・ハルクというゲリラ団体が組織され,79年のイラン革命に際し人民蜂起で大きな役割を果たしたが,その後非合法化された。
執筆者:黒柳 恒男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報