山川 世界史小辞典 改訂新版 「イスラーム」の解説
イスラーム
al-Islām
原義はアラビア語で身を委ねること,転じて唯一神アッラーへの服従,帰依をさす。7世紀初頭,メッカの商人ムハンマドが神の召命を受けてその布教を開始した。メディナへの彼のヒジュラはイスラーム暦の元年とされる。聖典コーランは彼が受けた啓示を集めた書である。ムハンマドはユダヤ教・キリスト教的な意味での預言者で,コーランは旧約聖書,新約聖書に続く啓典と位置づけられている。ただ,イスラームはユダヤ教,キリスト教に先立つ預言者アブラハムが信奉した一神教を復興,完成させることを目的としている。メディナにおいて信徒のウンマとして成立,発展したイスラームは,狭義の宗教にとどまらず,シャリーアを通じて個人の生活および社会において実践される。信者として信仰し,行うべきことの基本は,六信五行として定式化されている。六信とはアッラー,天使,啓典,預言者,来世,予定説をさす。五行とはシャハーダ,礼拝,断食,ザカート,巡礼をさす。以上の項目は宗派を問わず共通し,ただ個別的問題について神学・法学上の立場の相違がある。イスラームはスンナ派とシーア派に大別されるが,これはもともとは政治的原因によるもので,各派が特定の神学派や法学派によって代表されるのはのちのことである。スンナ派では,アシュアリー派神学を基調とし,四つの法学派が公認されている。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報