改訂新版 世界大百科事典 「フィノー」の意味・わかりやすい解説
フィノー
Louis Finot
生没年:1864-1935
フランスの東洋学者。パリの古文書学校を卒業し,1894年エコール・プラティーク・デ・オート・ゼチュードで学位を取得した。98年インドシナ考古学調査に赴き,1900年ハノイに設けられた極東学院の初代院長に就任,29年まで4度にわたり通算19年間院長職にあった。この間コレージュ・ド・フランス教授,学士院会員にもなった。インドシナ研究の制度的枠組みと学問的基礎を築いた学者であるが,行政手腕にも優れ,極東学院から多くの現地語テキスト,写本,調査報告,研究成果などを刊行する道を開き,同時に単なる植民地研究を学問レベルにまで引き上げ,数多くの学者を育てた。多忙な行政の間隙をぬって,主著3冊,論文約80編を書いた。碑刻文学研究に先駆的な業績がたくさんあり,歴史,考古,言語分野にも優れた論文がある。特に《極東学院紀要》に連載された〈碑刻文学研究〉論文20編は,チャンパの碑文,カンボジアの碑文を解読し,遺跡研究を行い,チャンパとカンボジアの歴史・文化に関して数えきれないほどの新知見を学界にもたらした。
執筆者:石沢 良昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報