改訂新版 世界大百科事典 「フィロポノス」の意味・わかりやすい解説
フィロポノス
Iōannēs Philoponos
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…このとき力は,運動の原因である。慣性運動のように,一見作用力が働いていないようにみえる運動にも強制的運動力は働いているのであって,それは,フィロポノスの〈非物体的asōmatosな運動力〉,イスラムの〈マイルmayl〉,そして14世紀以降のヨーロッパの〈インペトゥスimpetus〉などの概念に結実している。 ガリレイは慣性運動を〈力の働かない〉運動としてとらえることに成功し,デカルトはそれを〈等速直線運動〉として定義したが,デカルトにおいては,運動と物質とは,神が創造に当たって同等の資格で措定したものであり,したがって,運動はいかなる場合にも減少したり消滅したりすることはない,という立場をとった。…
…この考え方では,慣性的運動(外から運動力が加えられていないように見えてなお運動が起こっている場合)が説明できない。そこで多くのアド・ホックな説明が生まれたが,アリストテレスのビザンティンにおける注釈者フィロポノスが案出した〈非物体的運動力〉,つまり目に見える形で物体に対して近接作用的に働く力が認められない場合でも,物体内部に運動力が〈込められ〉て,〈残留する〉ことがあるという考え方が,イスラム,中世後期ヨーロッパでさまざまな形で利用されることになった。 一方,自然落下現象はアリストテレスにあっては,運動力を原因とするものではない。…
※「フィロポノス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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