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旧約聖書巻頭の書,〈モーセ五書〉の第1書。世界の起源と全人類の太古を扱う原初史(1~11)とイスラエルの先祖の族長たちの物語(12~50)の2部に大別できる。第1部は天地創造と神の似姿としての人間の創造(1),エデンの園でのアダムとイブ,蛇の誘惑による堕罪と園からの追放(2~3),長子カインの弟アベル殺しと追放(4),人類の罪の増大とノアの時代の大洪水による神の処罰,新しい世界の秩序の約束(5~9),ノアの子孫による諸民族の誕生,人類の文明の高慢に対する神の処罰としての言語の混乱(10~11)を記す。
第2部はこのような人類を救済する神の歴史の根幹としての意味をもつイスラエル民族の選びの歴史を,アブラハムとイサクの物語(12~27),ヤコブ物語(28~36),ヨセフと兄弟たちの物語(37~50)の形で叙述し,ヤコブ一族のエジプト下りまでを描いて,次の《出エジプト記》に民族史の叙述を引き継いでいる。その叙述はいわゆる歴史記述ではなく,民族に伝承された伝説を素材として,これを変容,編集したり(アブラハム,イサク,ヤコブの各物語),あるいは文学作品として創作された(ヨセフ物語)ものであり,イスラエルの王国時代からバビロン捕囚後の時代までの複雑な形成史が推定される。五書資料(ヤハウェ資料,エロヒム資料,祭司資料)によって叙述の強調点が異なり,またそれぞれ独自の思想提示があるが,資料認識や形成史について,いまだに学者の判断が分かれている。
執筆者:並木 浩一
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『旧約聖書』の冒頭の書で、「モーセ五書」の第一書。神の天地創造、人類創造(アダムとイブ)、堕罪と楽園追放、カインによる弟アベル殺し、ノアの洪水、バベルの塔などよく知られた神話的伝承を含む。12章以下には、イスラエル民族の最古の時代の族長アブラハム、イサク、ヤコブの伝承にヨセフ物語が続き、エジプトでのヨセフの死で終わっている。伝統的にはモーセの作とされていたが、聖書学的研究によれば、紀元前10~前9世紀のJ(ヤハウィスト)資料、前9~前8世紀のE(エロヒスト)資料、前5世紀ごろのP(祭司)資料からなり、これらが祭司系の編集者によって前5世紀ごろに現形にまとめられたものといわれる。歴史書というよりは宗教書であって、神の創造した世界における人間の罪に満ちた歴史と、それに対する神の救済の意図を信仰の立場から描いたものというべきであろう。とはいえ、族長伝承などは前二千年紀の古代オリエント史と深く結び付いている。
[清重尚弘]
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…原古には,下界が一面の海だったと見なす発想は,多くの神話に共通して見られる。旧約聖書に見られる古代イスラエル人の神話でも,神が天地を創造する以前には世界は一面の海原だったとされ,そのありさまが《創世記》の冒頭に,〈地は形なく,むなしく,やみが淵のおもてにあり,神の霊が水のおもてをおおっていた〉と記されている。インドの神話によれば,世界のはじめには,茫漠たる大洋の上で宇宙の維持者である大神ビシュヌが,一頭の巨大な蛇を寝台にして長い冥想の眠りに耽っている。…
…旧約聖書《創世記》の冒頭に述べられた世界の創造をいう。それによると,神は混沌から,光と闇,水と天,陸と植物,太陽と月と星,魚と鳥,獣と人間(アダムとイブ)を6日間でつくり,7日目は安息の日としたという。…
…ヘブライ語による神話は,前10世紀以降初めて散文の形で文字化され,旧約聖書の《創世記》の人類太古史として,今日に伝えられている。〈天地創造〉〈人類の誕生〉〈カインとアベル〉〈ノアの洪水〉〈バベルの塔〉などがそれである。…
…アダムとイブの,エデンの園(楽園)からの追放をいう。旧約聖書《創世記》2~3章によると,アダムとイブは苦しみも心配もなくエデンの園に住んでいたが,蛇の誘惑に負けて知恵の木の実を食べた。神の命にそむくこの行為(原罪)のため2人は楽園を追われ,それ以来人間は苦労して働き,ついには死する運命となった。…
※「創世記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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