フェッラー(その他表記)fellāḥ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェッラー」の意味・わかりやすい解説

フェッラー
fellāḥ

古典アラビア語では fallāḥ。初期イスラム時代から現在にいたる西アジア,エジプト社会の農民呼称地主,小自作農,小作人の意で,また「町の人」に対して「田舎の人」を意味する。前近代のイスラム社会では家族労働による農業経営を行う小農民をさす場合が多い。7世紀から 11世紀頃までの村落共同体の農民は比較的自由な農業経営を営み,地租ハラージを国家に納入する存在であった。 10世紀以降,軍人と土地とを結びつけるイクター制が成立すると,フェッラーはイクター保有者に地租以外にさまざまな貢租を提出する「農奴」となり,この状態はオスマン朝時代まで続いた。 19世紀以降,地主制の再編成によってフェッラーの経済状態はますます悪化したが,エジプトでは,1952年の革命以後ようやく本格的な土地改革が実施され,フェッラーの農奴的地位は改善された。

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