フェニキア美術(読み)フェニキアびじゅつ(その他表記)Phoenician art

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェニキア美術」の意味・わかりやすい解説

フェニキア美術
フェニキアびじゅつ
Phoenician art

フェニキアの美術。前 3000年頃からエジプト・メソポタミア文明の影響のもとに始り,前 2000年頃からはエーゲ海文明と同化して独自の様式を生み出した。特にウガリトビブロスでは,ブロンズの小彫像,各種工芸品,装身具などが作られ,前 15~13世紀頃の有名な『バール神』 (ルーブル美術館) をはじめ浮彫石碑図像で飾られた金銀製の容器などが多く残されている。さらにビブロス,ベイルート,シドン,テュロスの発掘により前 10~7世紀頃の外来様式を消化した独自の表現による宮殿跡が発見され,またフェニキア文字の記銘がある『タブニト王のエジプト風石棺』 (イスタンブール考古学博物館) ,象牙浮彫の碑板,金製の各種装身具などが出土した。さらにアフリカ北端の古代カルタゴにおいても前5~3世紀にかけてフェニキア美術の影響を受け,クアルトハダストで発掘されたいわゆる『巫女の石棺』 (カルタゴ国立美術館) などの浮彫彫刻をはじめ多くの注目すべき遺例がある。

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