ビブロス(読み)びぶろす(英語表記)Byblos

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビブロス」の意味・わかりやすい解説

ビブロス
Byblos

フェニキアの古代都市。現レバノンの港町ジュバイル旧約聖書ではゲバルと呼ばれている。現在のトリポリベイルートとの中間に位置する。「ビブロス」はギリシア語で英語のバイブルと同じ語源。元来パピルスがこの地を経て輸出されたことにちなむ。カナン (フェニキア) 人のウガリトと並ぶ代表的な都市遺跡。 1921年 P.モンテにより発掘が開始され,1926年 M.デュナンが受け継いだ。古代エジプトの古,中,新の各王朝に対比される3時期の神殿,城塞,市街地,陵墓などが明らかにされた。このほか都市址の下層からは新石器~金石併用時代の家屋址や墓址も発見された。最下層からはアナトリア地方のものと類似する暗黒色の磨研土器やエンメル小麦が出土し,放射能年代測定により前 6000年頃のものとされている。前 3500年頃から人口が増加。古王国時代 (前 2686頃~2181頃) のエジプトと密接な関係をもつにいたり,ビブロス王の墓からはエジプト文字の碑文,エジプト的美術作品が出土している。エジプト第 12王朝 (前 1991~1786) の頃にはエジプトの属国となり,グブラと呼ばれた。エジプト新王国崩壊後はフェニキアの主要都市となり,前 10世紀テュロスの王が権力をもってからは,ビブロスは主導権を失ったが,ローマ帝国時代までは海港として繁栄した。前 11世紀末のアヒラム王の石棺とその碑文は特に重要。また前2千年紀のビブロス文字は最古セム語のアルファベットとされている。 1984年世界遺産の文化遺産登録

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビブロス」の意味・わかりやすい解説

ビブロス
びぶろす
Byblos

古代フェニキアの港市。レバノン共和国の首都ベイルートから北方39キロメートルの海岸地帯にその遺跡がある。ビブロスはギリシア名で、フェニキア名はゲバルあるいはグブラであり、今日この地はジュバイルとよばれる村落となっている。ビブロスは紀元前四千年紀にさかのぼる東地中海最古の都市の一つで、1921年以降のフランスとレバノンの発掘調査により、女神バアラト・ゲバル、男神レシェフの神殿や城壁、墓地などが発見され、また石棺や多数の副葬品が出土した。なかでも有名なのは1923年にフランスのH・モンテによってこの地で発掘されたアヒラム王石棺で、石蓋(せきがい)の周りに刻まれたフェニキア文字は前1300~前1000年(諸説がある)の最古期アルファベットとみなされている。今日のビブロス遺跡には、フェニキアのほかにローマ時代の列柱や劇場の遺構、さらに下って中世の十字軍時代の城塞(じょうさい)、マムルーク朝時代の貯水池の跡などもみいだされている。なお、この遺跡は1984年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。

矢島文夫

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