浮彫(読み)ウキボリ

デジタル大辞泉 「浮彫」の意味・読み・例文・類語

うき‐ぼり【浮(き)彫(り)】

平面に絵・模様・文字などを浮き上がるように彫ること。また、その彫刻。高浮き彫り・薄浮き彫りなどがある。浮き上げ彫り。うけぼり。レリーフ
あるものがはっきりと見えるようになること。「問題点が浮き彫りにされる」
[補説]書名別項。→浮彫
[類語]明瞭明快平明簡明明晰明白明明白白端的はっきりくっきりありありまざまざしか明らかきわやか定かさやか鮮やか生生しい見え見え丸見えめっきりクリア鮮明分明顕著顕然歴然歴歴瞭然りょうぜん亮然りょうぜん判然画然かくぜん截然せつぜん明確明解自明彷彿鮮烈一目瞭然火を見るよりも明らか手に取るようたなごころを指すまがう方ない隠れもない目に見える言わずと知れた紛れもない見るから

うきぼり【浮彫】[書名]

竹友藻風の第2詩集。大正4年(1915)刊。

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精選版 日本国語大辞典 「浮彫」の意味・読み・例文・類語

うき‐ぼり【浮彫】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 像や模様を、背景の平面から浮きださせるようにする彫り方。また、その彫刻。日本では興福寺板彫り十二神像が有名。うきあげぼり。うけぼり。レリーフ。
    1. [初出の実例]「薄荷(はっか)の花の眼も及ばぬまで濃(こまか)きを浮き彫にして」(出典風流仏(1889)〈幸田露伴〉五)
  3. ( 比喩的に ) 下地や背景から区別されて、はっきり見えるさま。また、背景になる事件によってそのものが明らかになるさま。
    1. [初出の実例]「浮き刻りの深き記憶を離れて」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉七)
    2. 「暗がりのなかに白い顔がくっきりと浮彫にされた」(出典:銀の匙(1913‐15)〈中勘助〉後)

うけ‐ぼり【浮彫】

  1. 〘 名詞 〙うきぼり(浮彫)
    1. [初出の実例]「太刀は、くろ太刀とてさやぬりおとし、つかさめをかけて黒くぬる。かなごしゃくどう、うけ彫、けぼり、ななこたるべし」(出典:宗五大草紙(1528)衣装の事)

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改訂新版 世界大百科事典 「浮彫」の意味・わかりやすい解説

浮彫 (うきぼり)

背景をなす面より彫刻が立体的に浮き出し,しかもその彫刻の奥行きが丸彫彫刻に比較して圧縮されているもの。レリーフreliefともいい,イタリア語rilievoに始まる彫刻の用語である。厳密には,単なる刻線によるもの,たとえばタッシリ・ナジェールの岩壁刻線画とは区別され,またギリシアの神殿の破風彫刻やゴシック大聖堂の彫像のように,完全な丸彫彫刻を背景壁面に固定したものとも区別される。彫刻の浮出しの程度,換言すれば奥行き空間の圧縮度に応じて,高浮彫altorilievo,半浮彫(中肉浮彫mezzo rilievo,低浮彫(薄肉浮彫basso rilievoに分類される。これらは,いずれも彫刻が背景面より突出するいわゆる〈陽刻〉に属するが,浮彫の特殊な例としては,逆に背景面より彫刻が沈む〈陰刻〉,あるいは〈沈み彫〉があり,円筒印章の場合などは完全な陰刻の例であり,古代エジプトで慣用された手法では,彫刻そのものは低浮彫の陽刻であるが,輪郭線の部分で彫り込まれて,ぜんたいが背景面より沈んでいる,いわゆる〈くり型浮彫〉がある。

 浮彫は,旧石器時代以来,聖所,神殿,聖堂に施される作品をはじめとして,祭壇,記念碑,工芸品,家具,印章など,多様な用途をもち,材料としては,石,土,木,金属,貴石,スタッコなど,技法としては,彫込み,彫塑,木型などによる打出し,鋳造などの技術が用いられる。したがって,彫刻の一種の技法と考えることが可能であるが,その視覚的な効果なり技法の本質から見れば,絵画と彫刻の中間に位置するものといえよう。ルネサンス彫刻に新風をもたらしたドナテロが,フィレンツェオルサンミケーレ教会の《聖ゲオルギウス》の台座のために彫った《竜を退治する聖ゲオルギウス》などがひとつの例である。ドナテロは,ここで,極端に奥行きを浅くし,いわゆる〈押しつぶされた浮彫rilievo stiacciato〉を行っているが,その浅さにもかかわらず,人物の丸味,群像の遠近関係がみごとに表現されている。つまり,絵画の遠近法と彫刻の凸凹の明暗とが巧妙に併用されている。

 古代や中世ではこの種の遠近法は用いられていないが,独立した丸彫と異なり,浮彫は平面的に展開することが可能であり,その意味では,壁画と同様の効果をもち,とりわけ,その耐久性と明暗の効果の点で,モニュメンタルな建築装飾によく適合しえた。アッシリアの浮彫による壮大な叙事詩,エジプト神殿に刻まれた歴史や日常生活は,まさに石の絵巻物というべきであり,ギリシア神殿のフリーズやメトープの浮彫,あるいは中世キリスト教聖堂の扉口上部の半月形浮彫などのファサードは,石の聖書,石の神話となっている。前述のように絵画の遠近法の併用を試みたルネサンス期には,祭壇,説教壇,唱歌壇の浮彫,あるいはギベルティによるフィレンツェのサン・ジョバンニ洗礼堂の青銅扉など,あらゆる部門で浮彫の全盛期をなした。近代美術ではモニュメンタルな作品は減少しているが,しかし,ロダンの《地獄の門》のような例を見ることができる。また,20世紀に入ってからは,ダダ以降,キャンバス上に針金やその他の付加物を用いる試みがしばしばなされているが,これは浮彫の触知性への絵画の側からのアプローチと見ることができよう。

 逆に最古の例としては,旧石器時代の洞窟壁画に,しばしば岩壁の凸凹を動物の形姿に利用した例があり,ル・ロック・ド・セール洞窟の動物浮彫の大群像は,そこからの発展である。つまり,自然の岩石や壁面の凸凹になんらかの形姿への類似を見いだし,さらにそれをより完全にしようとしたこと,そこに彫刻と絵画のもっとも重要な始源の存在したことを物語っている。
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百科事典マイペディア 「浮彫」の意味・わかりやすい解説

浮彫【うきぼり】

平面上に形象を盛り上げ,浮き出させる彫塑技法。レリーフreliefともいい,イタリア語のレリエボrelievo(浮き上がらせる)に由来する。浮き出す像の厚さに応じて高肉浮彫,薄肉浮彫に区別される。古代エジプトの凹彫(沈み彫)は特殊な形式。中国では漢代の画像石に始まり,ギリシア,インドの影響を受けて六朝時代〜唐時代に発達し,瓦や鏡の装飾に用いられた。日本でも奈良時代に同じような形で用いられたが,その後あまり発展しなかった。
→関連項目エローラ大谷磨崖仏鎌倉彫ギベルティタンパンテセイオンバージャーバールフットピュロン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「浮彫」の意味・わかりやすい解説

浮彫
うきぼり
relief

彫刻用語。陽刻。彫塑技法で,形象を背景素地から浮き上がらせる手法をさす。背景地からの浮き出し方の程度に応じて,高浮 (高肉) 彫,半肉彫,低浮 (薄肉) 彫に分れる。またエジプトの浮彫に多くみられるように,形象が地より低く彫られる場合,沈み彫,陰刻と呼ばれる。

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世界大百科事典(旧版)内の浮彫の言及

【彫刻】より

…したがって,鑑賞も,現実の光と影,触知性,運動性を媒介としてなされる。彫刻は,丸彫彫刻と浮彫,さらに近代のモビールmobileに大別される。このうち浮彫は,絵画の平面性に近い部分をもつが,その場合でも現実の明暗と作品の凹凸の関連が,鑑賞の媒介となる。…

【木彫】より

…木を素材とした彫刻,浮彫。木材は,石材,テラコッタ,ブロンズ(青銅)などとともにもっとも一般的な彫刻用素材であり,木材の産出する地域では手に入れやすいため,丸彫彫刻のみならず,建築,家具などの装飾や工芸品の素材としても多用された。…

※「浮彫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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