フッ化酸素(読み)ふっかさんそ(英語表記)oxygen fluoride

改訂新版 世界大百科事典 「フッ化酸素」の意味・わかりやすい解説

フッ(弗)化酸素 (ふっかさんそ)
oxygen fluoride

フッ素と酸素の化合物で,OF2,O2F2,O3F2,O4F2の4種が知られ,ロケット燃料として研究が進められている。

化学式OF2。水酸化ナトリウム水溶液にフッ素を通ずるか,HF-KFの水溶液を電解すると得られる。フッ化カリウムの存在下で水とフッ素を反応させる方法もある。融点-223.8℃,沸点-144.8℃。気体無色液体は淡黄色。有毒。フッ化酸素中最も安定で,化学的には比較的不活性であるが,その強い酸化力に特徴があり,ハロゲンと混合するか水蒸気と混合すると室温で爆発。H2,CH4,COとは放電下で爆発的に反応。放電下ではXeとも反応してフッ化キセノンおよび酸化フッ化キセノンを生ずる。

77~90KでO2とF2の混合物に高圧放電すると生ずる。二フッ化二酸素O2F2は融点-163.5℃,沸点-57℃。褐色気体,液体は赤褐色固体はだいだい色。強力なフッ素化剤,酸化剤で,多くの物質は低温でもこれに触れると爆発する。二フッ化三酸素O3F2は90Kで暗赤色,粘性ある液体。F2あるいはF2とO2の混合物より反応性が高い。二フッ化四酸素O4F2は77Kで赤褐色の固体であるが,詳細はまだよくわかっていない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「フッ化酸素」の解説

フッ化酸素
フッカサンソ
oxygen fluoride

】二フッ化酸素(oxygen difluoride):OF2(54.00).フッ素を水酸化ナトリウム水溶液にゆっくり通すと得られる.室温では無色の特有臭のある気体.F-O-F折れ線形構造.密度2.19 g cm-3(液体).O-F約1.418 Å.∠F-O-F約103.2°.融点-223.8 ℃,沸点-145 ℃.125 ℃ までは安定である.比較的安定で冷時はガラスを侵さない.室温ではCH4,COなどと混合しうるが,これらの混合気体は点火すると爆発的に反応する.室温でも Cl2,Br2 とは爆発的に反応する.HX(X = Cl,Br)では,HFと X2 になる.水に微溶,加水分解は遅いが,アルカリ性水溶液では加速され,フッ化物と O2 になる.多くの金属,非金属と反応してフッ化物をつくる.Xeとの混合気体で放電するとXeのフッ化物,フッ化酸化物を生じる.酸化剤,ロケットの燃料などに用いられる.有毒.[CAS 7783-41-7]【】二フッ化二酸素(dioxygen difluoride):O2F2(70.00).低温・低圧下,酸素とフッ素との混合気体中で,高圧放電すると得られる.F-O-O-F型構造.F-O1.575 Å,O-O1.217 Å.∠F-O-O約109°.両側のF-O-O面間の二面角約88°.融点-163.5 ℃,沸点-57 ℃.反応性が大きく(フッ素化,酸化反応),不安定で分解しやすい(-50 ℃ で半減期約3 h で O2 と F2 になる).Xeと反応してフッ化物をつくる.[CAS 7783-44-0]【】一フッ化二酸素(dioxygen monofluoride):O2F(51.00).酸素と原子状フッ素Fとの反応により生成する.O-O-F型分子と考えられる.水と反応してHFと O2 になる.[CAS 15499-23-7]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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