日本大百科全書(ニッポニカ) 「フッ化物」の意味・わかりやすい解説
フッ化物
ふっかぶつ
fluoride
フッ素と他の元素との化合物の総称。ほとんどすべての元素のフッ化物が知られる。単体または酸化物にフッ化水素酸を作用させるか、単体間の直接反応で得られる。フッ素は電気陰性度がもっとも大きいから、フッ化物中のフッ素の酸化数はつねに-Ⅰと考えられる。電気陽性な非遷移元素はフッ素とイオン結合性結晶をつくる。リチウム以外のアルカリ金属と銀のフッ化物は水に溶けるが、アルカリ土類金属の塩は水に溶けにくい。たとえば、蛍石(ほたるいし)CaF2などがそうである。非金属元素はフッ素と共有結合性の分子をつくり、常温で気体または液体のものが多い。たとえば、硫黄(いおう)のフッ化物のうち5種が気体、1種が液体である。フッ化ケイ素はフルオロ錯イオンをつくる。遷移元素では、酸化数の異なるフッ化物が多数知られる。たとえば、ウランには三、四、五および六フッ化物などがある。酸化数が高くなるにつれ、融点が低くなる傾向がみられる。フッ化物はフッ素およびフッ素化合物の原料となる。
[守永健一・中原勝儼]