フッ化キセノン(読み)ふっかキセノン(その他表記)xenon fluoride

改訂新版 世界大百科事典 「フッ化キセノン」の意味・わかりやすい解説

フッ(弗)化キセノン (ふっかキセノン)
xenon fluoride

アメリカのクラーセンH.H.Claassenらによって,1962年に希ガス元素キセノンとフッ素とから直接合成された化合物。二,四,六フッ化物が知られている。いずれもフッ素化作用が強く,不安定であるが,フッ化水素酸に溶けると安定となる。

化学式XeF2。キセノンとやや過剰のフッ素を混合し,400℃に熱して得られる。無色結晶室温で昇華する(蒸気圧3~4mmHg)。三重点129.03℃。水では加水分解してキセノンとフッ化水素になる。強力なフッ素化剤だが,フッ化キセノン中では最も弱い。

化学式XeF4。キセノンとフッ素との混合比1:5で,5気圧,温度400℃で反応させて急冷すると,XeF2,XeF6などとの混合物として得られるので,昇華その他によって分離する。無色の結晶。昇華しやすい,三重点117.10℃。水に溶けて加水分解してXe,HF,O2,XeO3などとなる。

化学式XeF6。キセノンと大過剰のフッ素との混合物を,加圧下で熱して得られる。無色の結晶。融点46℃,沸点20℃(27mmHg)。水で加水分解してXeOF4,XeO3,HFなどを生じる。フッ化キセノン中で最も強力なフッ素化剤。
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化学辞典 第2版 「フッ化キセノン」の解説

フッ化キセノン
フッカキセノン
xenon fluoride

】二フッ化キセノン:XeF2(169.29).Xe過剰でフッ素との混合気体を加熱するか,または紫外線,放射線などを照射すると得られる.透明な正方晶系結晶.密度4.32 g cm-3.融点129.03 ℃.蒸気は無色で悪臭をもつ.乾燥状態では安定で,ニッケル製容器,ガラスまたは石英容器に貯蔵できる.1 mol L-1 NaOHにより加水分解されてXeと O2 とHFになる.フッ素化剤として用いられる.[CAS 13709-36-9]【】四フッ化キセノン:XeF4(207.29).無色の単斜晶系結晶.蒸気も無色.安定性もXeF2とほぼ同様である.XeF2よりやや強いフッ素化剤として用いられる.[CAS 13709-61-0]【】六フッ化キセノン:XeF6(245.28).固体は無色.液体および蒸気は黄緑色.融点49.5 ℃.HFによく溶け,

HF + XeF6 → XeF5 + HF2

のように電離する.XeF2,XeF4はHF中ではほとんど電離しない.XeF6も安定な化合物で,Xeフッ化物中で最強のフッ素化剤として用いられる.[CAS 13693-09-9]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フッ化キセノン」の意味・わかりやすい解説

フッ化キセノン
ふっかきせのん
xenon fluoride

フッ素とキセノンの化合物。1962年にキセノンが化学結合に直接関与する化合物としてXe[PtF6]が報告された直後から、世界各地の研究者からキセノン化合物合成の報告があり、その多くはフッ化物あるいはフッ化酸化物であった。代表的フッ化物としては、いずれも常温で固体となる二フッ化キセノンXeF2、四フッ化キセノンXeF4、六フッ化キセノンXeF6で、それぞれ条件は異なるが、キセノンとフッ素を直接反応させて合成される。二フッ化キセノン、六フッ化キセノンは他のフッ化物と付加化合物を生成する。すべてのキセノンフッ化物は不安定であり、容易に分解する。フッ化酸化物としてはXeF2O、XeF4Oなどが知られている。

[岩本振武]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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