改訂新版 世界大百科事典 「フュルティエール」の意味・わかりやすい解説
フュルティエール
Antoine Furetière
生没年:1619-88
フランスの文学者。パリの古い町民の家に生まれ,法律を学んで弁護士になったが,のち宗門に入った。1645年ころから文人としても知られ,風刺文学を得意として,風刺詩人ボアローのよき先輩であった。またラ・フォンテーヌ,モリエール,ラシーヌらの大作家をも友とし,1662年にはアカデミー・フランセーズの会員に選ばれた。66年にパリの町人の風俗を写実的に描いた風刺小説《町人物語》を世に問い,これは彼の代表作となった。1672年ころから《大辞典Dictionnaire universel》の編纂に励んだが,84年これを出版しようとして,辞典公刊を独占していたアカデミーと対立し,激しい論戦の末翌年アカデミーからも除外され,失意のうちにパリで没した。この辞典はその2年後(1690),ピエール・ベールによってオランダで刊行された。規範的な《アカデミー辞典》(1694)とは異なり,一種の百科事典の観があり,多方面のおびただしい術語のほか古語,新語,俗語をも収め,また語義にも詳しく,17世紀のフランス語を知る上で不可欠の文献である。
執筆者:赤木 昭三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報