フローリー-ハギンスの理論(読み)フローリーハギンスノリロン

化学辞典 第2版 の解説

フローリー-ハギンスの理論
フローリーハギンスノリロン
Flory-Huggins' theory

高分子溶液混合エントロピーが異常に大きいのは,溶質の分子量が大きいためである.そこで,N0 個の溶媒分子と N1 個の溶質分子からなり,各溶質分子はそれぞれn個のセグメントからなる系について,ブラッグ-ウィリアムズ近似を用いて,P.J. Flory(フローリー)は混合エントロピーとして,

k(N0 ln φ0N1 ln φ1)
を導いた.ただし,kボルツマン定数φ0φ1 は溶媒,高分子の容積分率で,

で与えられる.この混合エントロピーの式は,φ0φ1モル分率とみなせば,形式的には理想溶液に対するものと同じで,簡単な形をしている.M.L. Hugginsは高分子がつながっている効果をさらに精密に取り入れて,少し違った形の式を得た.しかし,混合自由エネルギーの形で表すと,二つの理論は同一の形になるので,両者を合わせてフローリー-ハギンスの理論という.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

法則の辞典 の解説

フローリー‐ハギンスの理論【Flory-Huggins theory】

高分子溶液の統計力学における画期的な理論.フローリーとハギンスがそれぞれ独立に導いた.

フローリーの取り扱いは,古典統計力学におけるブラッグ‐ウィリアムズの近似に相当するもので,混合エントロピー ⊿SM が次式で与えられる.すなわち

SMRN1ln v1N2ln v2

ここで N1v1 は溶媒の分子数と容量分率,N2v2 は高分子の分子数と容量分率である.ハギンスの理論は高分子鎖の結合状況などを詳しく考慮しているが,最終結果においてはほとんど差がないので,通常両者を併せて,フローリー‐ハギンスの理論と呼んでいる.混合自由エネルギーを溶媒分子数で微分した「微分分子希釈エネルギー」⊿F1 は,どちらによっても同じく次の式で与えられる.

ここで T は絶対温度,m は高分子溶質の溶媒分子に対する分子容の比,χ は高分子溶媒相互作用定数である.

出典 朝倉書店法則の辞典について 情報

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