溶液中に存在する各成分iの化学ポテンシャルμiが,
μi=μi°+RTlnxi
(μi°は温度と圧力とが決まればiに固有な定数,Rは気体定数,Tは絶対温度,xiは成分iのモル分率)の関係を満足する溶液を理想溶液という。各成分間の分子間力がすべて等しいような溶液は理想溶液の性質を示す。理想溶液の溶媒成分は〈ラウールの法則〉を厳密に満足する。A,Bの2成分があらゆる組成で混ざり合う場合には,どちらを溶媒とみなすかは便宜的なことで,両成分に対してラウールの法則を適用することができる。組成の全域にわたって両成分がともにラウールの法則に従うような理想溶液をとくに完全溶液perfect solutionという。ベンゼンとジクロロエタン,ジブロモエタンとジブロモプロパンなどのように,化学的性質や構造の似た物質どうしの溶液は,近似的にこの関係を満足する。また,すべての溶液は溶質の濃度が低くなるにつれて理想溶液に近づいていき,無限希釈では完全に理想的になる。このような希薄溶液(理想希薄溶液)では,溶質粒子間の相互作用を無視することができて,溶質成分については〈ヘンリーの法則〉が,溶媒成分についてはラウールの法則が厳密に成立する。完全溶液や理想希薄溶液は,いずれも,理想化された極限状態であって,実在の溶液は大なり小なり理想性からのずれを示すのが普通である。
執筆者:玉虫 伶太
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
定温・定圧で成分を混合して溶液をつくるとき、熱の出入りがなく、体積も混合前と混合後で変化がないような溶液のことを理想溶液という。すなわち、溶媒分子相互間の凝集力、溶質分子相互間の凝集力、さらに溶媒分子と溶質分子の間の凝集力の3種にすべて差がなく同一であることを意味する。これは理想気体が分子間相互作用(凝集力)を一定、すなわちゼロとしたことに対応している。
理想溶液においてはラウールの法則(希薄溶液の蒸気圧降下率は溶質のモル分率に等しく、溶媒・溶質の種類に無関係である、という法則)などが完全に満足される。クロロベンゼンC6H5ClとブロモベンゼンC6H5Brのように、もともと類似した化学構造をもつものの混合系は、広い濃度範囲(ほとんど全域)にわたって理想溶液としての性質を示すが、このような溶液を完全溶液Perfect solutionという。電解質溶液ならば溶質のモル分率にして100万分の1、非電解質溶液なら1000分の1よりも大となると、理想溶液からのずれが1%強となって無視できなくなる。これよりも希薄な溶液は理想溶液とみなしうる。
[山崎 昶]
ラウールの法則に従う溶液をいう.一般にきわめて希薄な溶液は,近似的にこれに該当するが,溶質分子と溶媒分子,あるいは溶質分子どうしの分子間相互作用が小さい場合にその状態に近づく.逆に,理想溶液が形成されにくい例として次のような場合がある.
(1)溶質が極性分子で溶媒が非極性分子からなる場合,
(2)ベンゼン溶媒中のカルボン酸のように会合性の溶質の場合,
(3)電解質溶液のように溶質が解離する場合,
理想溶液からの隔たりは,蒸気圧降下,沸点上昇,凝固点降下,浸透圧などの測定から知ることができる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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[溶液の熱力学的性質]
非電解質溶液ではその成分の組合せによって異なった性質を示すが,ふつう次のような相互作用の立場から論じられる。(1)理想溶液ideal solution 混合した場合に,熱変化や体積の変化がない仮想的な溶液である。すべての溶液はその濃度が十分に希薄な場合に理想溶液に近い性質を示す。…
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[溶液の熱力学的性質]
非電解質溶液ではその成分の組合せによって異なった性質を示すが,ふつう次のような相互作用の立場から論じられる。(1)理想溶液ideal solution 混合した場合に,熱変化や体積の変化がない仮想的な溶液である。すべての溶液はその濃度が十分に希薄な場合に理想溶液に近い性質を示す。…
※「理想溶液」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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