フローリー(読み)ふろーりー(英語表記)Sir Howard Walter Florey

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フローリー」の意味・わかりやすい解説

フローリー(Paul John Flory)
ふろーりー
Paul John Flory
(1910―1985)

アメリカの物理化学者。6月19日、イリノイ州スターリングに生まれる。現代高分子物理化学の枠組みをつくりあげた人物ともいわれるフローリーは、インディアナ州マンチェスター・カレッジを1931年に卒業したときにはすでに化学を志しており、オハイオ州立大学で物理化学を修めて、1934年に光化学と分光学で学位をとった。そしてデュポン化学工業会社に入社したことはその後の彼の研究方向を決定した。そこでは、合成ゴム「ネオプレン」、合成繊維ナイロン」を発明したばかりのカロザースが彼のグループのリーダーだったのである。シュタウディンガーやカロザースによって確立された概念「高分子」から彼はさい先よいスタートを切った。カロザースに協力して、その高分子研究の物理化学的側面を担当、まず縮合高分子生成とゲル化に関する統計理論を確立した。また1935、1936年に樹立されたマイヤー‐クーンのゴム弾性の統計理論を一歩進めて、いわゆる「網目理論」、すなわちゴム弾性を鎖状高分子の網目の熱運動として取り扱う理論をたてた。同時に鎖状高分子溶液統計力学を展開、いわゆる「格子理論」により粘度や浸透圧を解明した。その後も高分子学のあらゆる領域にわたり理論的・実験的研究を進めた。この業績、すなわち現代高分子学の基礎を確立した仕事に対し、1974年ノーベル化学賞が与えられた。1985年9月9日心不全のため死去した。

[中川鶴太郎]


フローリー(Sir Howard Walter Florey)
ふろーりー
Sir Howard Walter Florey
(1898―1968)

イギリス病理学者オーストラリアアデレード生まれ。1921年アデレード大学を卒業し、翌1922年オックスフォードのモードレン校に転じ、ついでケンブリッジ大学で学び、1925年アメリカに遊学した。1927年イギリスに戻り、ケンブリッジ大学の研究員、病理学講師となり、1931年シェフィールド大学病理学教授、1935年オックスフォード大学病理学教授となった。チェインとともに、A・フレミングの発見(1928)以降放置されていたペニシリンの研究を始め、1939年その粗結晶の抽出に成功した。人体による試験も行って治療効果を明らかにした。1941年アメリカに渡り、製薬会社などにペニシリンへの関心を抱かせ、大量生産への道を開いた。1944年ナイトに叙せられ、1945年ペニシリンとその抗菌効果の発見により、フレミング、チェインとともにノーベル医学生理学賞を受けた。

[藤野恒三郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フローリー」の意味・わかりやすい解説

フローリー
Flory, Paul John

[生]1910.6.19. イリノイ,スターリング
[没]1985.9.9. カリフォルニア
アメリカの物理化学者。 1934年オハイオ州立大学で学位を取得したのち,デュポン社,スタンダード石油会社などの研究所で合成繊維,合成ゴムなどの商業的に大成功を収めた重合体 (高分子物質) を研究・開発。コーネル大学教授 (1948) ,メロン研究所所長 (56) ,スタンフォード大学教授 (61) 。さらに,塊状および溶液状態にある高分子の物理的な研究,高分子の生成過程の研究など,非常に広範囲にわたって基礎的な研究を行なった。また高分子の化学構造と物理的性質を知るためには,分子の大きさと形を知る必要があることを示し,その方法の1つとして,高分子溶液の粘性から分子量と広がりを割出す「フローリーの式」などを考案した。今日のプラスチック全盛時代の生みの親の1人であり,74年ノーベル化学賞を受賞した。

フローリー
Florey, Howard Walter

[生]1898.9.24. アデレード
[没]1968.2.21. オックスフォード
オーストラリアの病理学者。アデレード,オックスフォード両大学で学び,1935~62年,オックスフォード大学病理学教授。組織の炎症や粘膜の分泌物を研究し,A.フレミングが発見したリゾチームの分離に成功。さらに 39年,やはりフレミングが発見したペニシリンの分離と精製に,同僚の E.チェーンとともに成功した。ペニシリンはその後大量生産され,第2次世界大戦中に多くの人命を救った。その功績によりフレミング,チェーンとともに 45年,ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

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