日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラッスール」の意味・わかりやすい解説
ブラッスール
ぶらっすーる
Pierre Brasseur
(1905―1972)
フランスの俳優。パリに生まれ、母親をはじめ一族に俳優が多い環境に育つ。最初画家を志すが、モンパルナス界隈にたむろするうちアンドレ・ブルトンらのシュルレアリストを知る。1928年のブールデ作『弱い性』の演技で注目され、48年にはカミュの『戒厳令』、クローデル作『真昼の分割』に主演。その後の、サルトルの『悪魔と神』のゲッツ役、『キーン』のキーン役はことに有名で、アヌイ作『オルニフル』やピンター作『帰郷』などで名演技をみせた。映画ではマルセル・カルネの『天井桟敷(さじき)の人々』(1944)中のフレデリック・ルメートル役が著名で、そのほかにも『夜の門』(1948)、『リラの門』(1957)などに主演した。処女作『黒い錨(いかり)』(1925)をはじめ、劇作もいくつか残している。
[利光哲夫]