戒厳令(読み)かいげんれい

百科事典マイペディアの解説

戒厳令【かいげんれい】

戦争や内乱などの非常時に際し,全国ないしは一部地域において通常の立法権,行政権,司法権の行使を軍部にゆだねる非常法をいう。国家緊急権制度のひとつ。非常法としての戒厳令は,フランス革命中の1791年の法律に起源をもつとされる。フランス,ドイツでは憲法中に定められたが,英国,米国では制度化された成文法としては存在しなかった。日本では,1882年に太政官布告として制定された。戒厳の宣告は天皇の権能(旧憲法14条)。戒厳が宣告されると,その地域における立法・司法・行政事務は戒厳司令官の権限に移され,住民の憲法上の自由・権利は制限されることが認められた。現行憲法では認められない。ただし,警察法は内閣総理大臣に緊急事態の布告を発する権限を認めており(71条),解釈上の問題となっている。
→関連項目五・一五事件自警団日比谷焼打事件山本権兵衛内閣

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世界大百科事典 第2版の解説

かいげんれい【戒厳令 martial law】

一般に非常時に際して通常の行政権,司法権の停止と軍による一国の全部または一部の支配の実現を意味する非常法をいう。戒厳という言葉自体は,中国の《正字通》に〈厳,およそ彊敵のまさに至らんとして備を設くを戒厳といい,敵退きやや備を弛むを解厳という〉とあるのに由来する。一方,欧米で戒厳に相当する用語は,いずれも敵に包囲された状態を意味している。非常法としての戒厳令の起源はフランス革命にさかのぼり,1791年の〈戦場および要塞の維持および区分,防御工事等の警察に関する法律〉とされる。

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大辞林 第三版の解説

かいげんれい【戒厳令】

非常時に軍隊に統治権をゆだねる命令。旧憲法下では天皇の大権に属した。1947年(昭和22)に廃止。

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精選版 日本国語大辞典の解説

かいげん‐れい【戒厳令】

〘名〙
① 戒厳を宣告する命令。戒厳の要件、効力は、明治一五年(一八八二)の太政官布告第三六号によって定められたが、現行憲法では戒厳の制度を否定したので、右の太政官布告は、昭和二二年(一九四七)に廃止された。
② (①に準じて) 兵力で警備する状態をいう。また、比喩的に、そのような緊張した状態についていう。
※不如帰(1898‐99)〈徳富蘆花〉上「川島家は毎(つね)に戒厳令の下にありて、家族は避雷針なき大木の下に夏住む如く、戦々兢々として明かし暮らしぬ」

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世界大百科事典内の戒厳令の言及

【日比谷焼打事件】より

…桂太郎内閣の御用新聞である国民新聞社,内相官邸を襲い,市内二つの警察署,大部分の分署・派出所・交番を焼き打ちし,キリスト教会を打ちこわしたりした。翌6日もその事態が続き,深夜緊急勅令をもって戒厳令の一部を東京市および周辺5郡に施行して近衛師団を出動させた。言論統制,新聞・雑誌の発行停止を行ったため,暴動はしだいに鎮静し,戒厳令は11月29日に解除された。…

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