古くから使われたことばで、港で波止のある場所をさして波止場とよんでいる。波止の語源には諸説があり、中国語の馬頭・埠頭(ふとう)などから転訛(てんか)したもの、あるいは泊(ハテ)から転じたものなどがあげられている。
一般に海中へ土堰堤(えんてい)を細長く突き出し、その表面を石材で被覆した構造物で、波を防いで靜穏な水域をつくり、貨物の積み下ろしを行った所であり、現在でいえば、防波効果を含めた小型の突堤式物揚場、あるいは背後の運上所(税関)などの陸上施設を含めた突堤式埠頭に相当する。小型船は波止場で直接荷役が可能であるが、大型船は水深の関係から接岸は困難で、小型船を利用した沖荷役となる。
現在の横浜港の大桟橋付近には、幕末の開港時において東波止場、西波止場が幕府により築造されていた。港湾施設が近代化へ向かう明治20年代以前の名残(なごり)の一つでもあったといえよう。
[堀口孝男]
…岸壁,物揚げ場,桟橋などの係船岸を中心に,船舶係岸用の水面および旅客の乗降施設,貨物の積卸し,荷さばき,貯蔵ならびに臨港交通施設を配置した陸域一帯であり,海陸輸送の転換が行われる機能を果たす港湾の中で,もっとも重要な部分である。明治初期までは,波止(はと)もしくは波止場(はとば)と称していたが,水面が静穏であることと同時に,荷役・輸送の機能が重視されるようになって,明治22年横浜港築港以後は埠頭の名が広く用いられている。 旅客,貨物がこの空間を通過するのに,多くの時間と費用と労力を要するので,船舶の種類,輸送の対象物に合わせて位置,形状ならびに諸施設の種類と規模を定め,これらを合理的に配置しなければならない。…
※「波止場」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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