改訂新版 世界大百科事典 「ブラリナトガリネズミ」の意味・わかりやすい解説
ブラリナトガリネズミ
greater North American short-tailed shrew
Blarina brevicauda
北アメリカ東部の森林や低木林にごくふつうに見られる尾の短いトガリネズミ。唾液に獲物捕獲や防御に有効な有毒成分が含まれるほとんど唯一の哺乳類として知られる。食虫目トガリネズミ科。トガリネズミ類としては大型で,がっしりした体つきをしている。四肢は短く,毛はビロード状。耳は小さい。体の上面は灰黒色,下面は灰色。他のトガリネズミ類同様,歯の先端はよく目だつ赤色。雄はとくに強い麝香(じやこう)臭をもつ。体長7.8~10.4cm,尾長1.7~3cm,体重12~23g。
地上生で,林床の落葉層あるいは茂みの中にトンネル状の通路をつくって単独で生活する。ふつう昆虫,ミミズ,小動物,果実,種子などを食べる。とくにネズミ類を攻撃し,有毒な唾液の効果で殺し食べることから,その個体数調節上の役割が注目される。巣材として,しばしば殺したネズミの毛が使われる。唾液の有毒成分は顎下腺(がつかせん)から分泌されるもので,総含有量の200分の1でマウスを数分のうちに殺す。ただし,人にはかまれた場合に激しい痛みをもたらすものの,大きな害はない。繁殖期は4~5月と8~9月の年2回。1産3~9子。6ヵ月で成熟する。寿命は1~2.5年程度。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報