改訂新版 世界大百科事典 「ブームスラング」の意味・わかりやすい解説
ブームスラング
boomslang
Dispholidus typus
ナミヘビ科に属する毒ヘビ。サハラ砂漠を除く熱帯アフリカに広く分布し,全長1.5~1.8m,最大は約2.2m。体色は緑色からオリーブ褐色,黒色まで変異が多く,頸部(けいぶ)を膨らませて威嚇姿勢をとると縞模様が現れる。樹上性で,開けた森林,サバンナ,ブッシュに生息し,餌は小鳥,ネズミ,カエル,カメレオンを含む樹上性トカゲなど。樹上ではまっすぐ体をのばし,枝に見せかけて獲物を待ち受ける。卵生で一度に10~14個ほどを産卵する。弱毒性の後牙(こうが)類の中にあって,南アフリカ産のアフリカツルヘビThelotornis kirtlandi(英名twig snake,bird snake)とともに毒性強く,人にも危険。毒牙は溝牙で大きく,上あごの後方に2~3対ある。毒性はマンバやコブラよりも強いとされ,神経系に作用する。出血毒性もある。著名な爬虫類学者K.P.シュミットは本種,R.メルテンスはアフリカツルヘビの咬症(こうしよう)により他界している。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報