カメレオン(読み)かめれおん(英語表記)chameleon

翻訳|chameleon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カメレオン」の意味・わかりやすい解説

カメレオン
かめれおん
chameleon

爬虫(はちゅう)綱有鱗目(ゆうりんもく)カメレオン科に属するトカゲ総称。この科Chamaeleonidaeの仲間は形態的に多くの特徴をもつ。カメレオン属Chamaeleo70種、コノハカメレオン属Brookesia16種が、サハラ砂漠を除くアフリカ大部分マダガスカル島とにほぼ半数ずつ分布し、チチュウカイカメレオンC. chamaeleon1種のみがスペイン南部、北アフリカ、アラビア半島インドスリランカに分布し、4亜種に分けられている。

[松井孝爾]

形態

すべての種が形態的に類似し、全長20~30センチメートル、尾はその2分の1よりやや長いが、マダガスカル島産のパースンカメレオンC. parsoniiマダガスカルオオカメレオンC. oustaletiは全長60センチメートルに達する大形種であり、他方、ヒメカメレオンB. nasusなどは全長3~4センチメートルにすぎない。カメレオンはアガマ科Agamidae系統から分化したと考えられ、トカゲではもっとも樹上生活に適応した形態をしている。胴は著しく側扁(そくへん)し、肩帯から斜め下方に張り出した四肢で支えられ、内部を太い肋骨(ろっこつ)で支えられる。前後肢ともに、5本の指は2本と3本の2束に癒合し、向かい合って枝を強く握ることができる。指は前肢では外側に2本、内側に3本、後肢ではその逆になっており、遊離した指先には鋭いつめがある。尾の先端部は枝に巻き付くが、通常は垂直方向に巻いている。頭部は大きくて角張り、骨質の兜(かぶと)状隆起や角(つの)状突起がある。ジャクソンカメレオンC. jacksoniiの雄は吻端(ふんたん)に3本、フィッシャーカメレオンC. fischeriは1対の角状突起をもつ。また胴の背面と腹面の正中線上に飾り鱗(うろこ)が並ぶ種類も多い。目は、上下の眼瞼(がんけん)がドーム状に癒着して細鱗に覆われ、頂点小孔が開き、左右別々に回転して異なった方向を見ることができる。

[松井孝爾]

生態

カメレオンは昼行性で、大半が樹上性であり、一部が地上にも降りる。行動はきわめてのろいが、細い1本の枝の上でも四肢で胴を持ち上げながら歩ける。餌(えさ)の昆虫、クモ類をみつけると、左右の目で焦点をあわせ、尾で枝を巻き体に反動をつけながら、舌を発射する。舌は環状の筋肉の束と細長い筋肉からなり、通常は圧縮して口内に収められている。舌の射出は、まず舌が収まった逆V字形をした舌骨を突き出し、環状の筋肉を引き締め、急に緩めることで行われ、数分の1秒というスピードで粘着力のある先端部が獲物に命中する。また、カメレオンは巧みな体色変化で知られるが、体色は環境ばかりでなく明暗や温度の変化、繁殖期の雄の争いなど感情によってもめまぐるしく変化する。大半の種が卵生で、地上に穴を掘り20~50個ほどを産卵するが、一部の種では卵胎生である。

[松井孝爾]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カメレオン」の意味・わかりやすい解説

カメレオン
Chamaeleontidae; chameleon

トカゲ目カメレオン科に属する動物の総称。体長4~60cm。体色を変える動物として有名であるほか,体が左右に側扁していること,眼を上下左右に別々に動かすことができること,足の指が数本ずつ向き合うような構造になっていて細い木の枝でもしっかりとつかむことができること,尾が器用に動き第5の足として使われること,舌を体の長さぐらい伸ばして虫を捕えることなど,非常に特徴的なグループである。樹上性。2属 84種から成り,アフリカとマダガスカル島にほぼ半数ずつが分布し,ほかにスペインなどに1種,アラビア半島に2種,インドなどに1種が知られている。

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