改訂新版 世界大百科事典 「プサンメティコス1世」の意味・わかりやすい解説
プサンメティコス[1世]
Psammetichos Ⅰ
古代エジプト第26(サイス)王朝初代の王。在位,前663ころ-前609年ころ。下エジプトの,ネイト女神の聖地であったサイスの豪族ネコの子。初めアッシリア帝国の傀儡(かいらい)であったが,のち完全に独立,エチオピア(カッシュ)の勢力をエジプトから一掃し,また諸侯の力を抑えて全土を統一,エジプト人による最後の栄光と繁栄とをエジプトにもたらした。しかし,このためにギリシア人やカリア人の傭兵を多く用いたので,政局安定後も彼らは軍の枢要の位置を占め,またナウクラティスをギリシア人のための自由港とせざるをえなかった。サイス朝は古王国・中王国を理想とする復古主義をモットーとし,そこに新生の道を見いだそうとした。残された美術作品にもその精神が十分見とられるが,彫刻などにはギリシア文化の影響も感得される。王の没後,息子のネコ2世が王位を継いだ。
執筆者:加藤 一朗
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