日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘッセルマン機関」の意味・わかりやすい解説
ヘッセルマン機関
へっせるまんきかん
Hesselman engine
液体燃料を燃焼室内に噴射して、電気火花で点火する往復動式内燃機関の一種。1925年ごろ、スウェーデンのジョナス・ヘッセルマンK. Jonas Hesselman(1877―1957)が開発の先鞭(せんべん)をつけた。とくにガソリン、重油、軽油以外の多種の燃料(重質油、魚油、大豆油など)が使用できる多種燃料機関として開発された。ヘッセルマン考案のエンジンは吸入弁にデフレクターをつけて、吸入空気がシリンダー内で回転運動をおこすようにし、ピストンの上面周辺を高くして高温に保ち、未気化燃料の気化を促進し、気化しない燃料がピストン上面からピストンとシリンダーの間を通ってクランク室に流入するのを防止している。圧縮比や最高圧力はガソリン機関とほぼ同じである。またガソリンエンジンと同様に、吸入空気量を負荷に応じて調節し、空気と燃料の割合(空燃比)を適当な範囲に保たせている。1935年ごろからしばらく使用されたが、ガソリンなどの供給が多くなるにつれて使用されなくなった。現在は軍用のエンジンとして、多種燃料を利用できる利点を生かした改良開発が続けられている。
[吉田正武]